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関西経済、税、納税協会の未来ー新時代の展望を語る

2021.01.08

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大阪国税局長
小原 昇
公益財団法人納税協会連合会会長
尾崎 裕

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【司会】
公益財団法人納税協会連合会
常任副会長
新木 敏克

(敬称略)

1 関西経済の展望

新木

 今日は、新春の対談ということですので、関西経済、税、そして、これからの納税協会について、ざっくばらんにお話しいただければと思います。
 さて、関西経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、インバウンドの急減や不要不急の外出控え等を背景として消費は減退し、経済的打撃が続く厳しい状況にありますが、政府の経済対策等の効果もあり、徐々にではありますが、持ち直しの動きがあるように思います。
 まずは尾崎会長、このような関西経済の現状と今後の展望について、どのようにお考えでしょうか。

尾崎

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本経済のみならず世界経済に大きな試練を与えています。国際通貨基金(IMF)が昨年10月に公表した経済見通しでは、2020年の世界の経済成長率はマイナス4・4%、日本の経済成長率はマイナス5・3%と大幅な減少であると予想しております。特に、近年の関西はインバウンド需要が起爆剤となって、経済を盛り上げていた面がございますので、当地は厳しい落ち込みに直面していると言えます。
 一方で、政府や日本銀行が実施している緊急経済対策は、需要の蒸発や急減に苦しむ企業の事業継続を下支えしております。例えば、地元の金融機関は政策パッケージを活用し、中小企業の資金繰りに奔走したことで、多くの企業の倒産や廃業を防ぎました。ただし、行政や民間企業のデジタル化が進んでいれば、非効率で煩雑な申請作業等を省き、苦境に陥った企業に必要な支援をより迅速に行き届けることができたと存じます。
 当分の間、インバウンド需要の大幅な回復が見込めない中で、とりわけ民間企業はコロナ禍で浮き彫りになった課題を解決し、新ビジネスにつなげていかなければなりません。デジタル化を急ぐことは言うまでもございませんが、奇しくも、当地では2025年大阪・関西万博が控え、ポスト・コロナの新しい経済社会を世界に発信する絶好の機会となります。産学官が知恵を結集させ、新ビジネスやイノベーションを生み出し、本年も関西から日本を盛り上げる年になることを期待しております。

新木

 小原局長は、関西経済について、どのようにご覧になっていますか。

小原

 令和元年度の近畿2府4県の国税収納額を見ますと、約9兆5703億円で前年度と比べ、約1006億円(前年比マイナス1・0%)減少し、8年ぶりの減少となるなど、税収面においても、年明けから始まった新型コロナウイルス感染症の影響が既に表れていることが分かります。
 また、昨年9月に国土交通省が発表した近畿2府4県の基準地価では、僅かながら上昇基調を保った大阪、京都の商業地を除き、軒並み下落しており、新型コロナウイルス感染症によるインバウンド需要の消失などが影響したと思われます。
 昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大によって、社会経済活動が停滞し、関西経済も同様に厳しい状況にありましたが、近畿財務局が発表しております昨年10月の管内経済情勢報告において、「新型コロナウイルス感染症の影響により、厳しい状況にあるものの、持ち直しの動きがみられる」とされております。
 関西には、医療・医学、製薬業の長い歴史と大学や研究機関、更には最先端の科学技術基盤が集積しており、昨年8月には理化学研究所や神戸大学などの研究チームがスーパーコンピュータ「富岳」を使い、新型コロナウイルス感染症対策に関する研究開発を実施するなど、関西の独自性を生かした貢献が始まっています。
 このように関西は、多くのイノベーションが生み出される可能性を持った地域ですので、関西経済を起点として日本経済が活性化することを期待しております。 

2 社会経済情勢の変化と税務行政の対応
新木

 ありがとうございます。次に税務行政について、局長にお伺いいたします。我が国の経済社会の状況は、新しい生活様式への対応、情報技術の発展、人口減少や少子高齢化、地域格差の拡大などの大きな構造変化の中にあります。
 このような状況の中において、変化する社会経済情勢への対応を常に求められる税の執行官庁として、どのような施策・取組をされておられるのでしょうか。

小原

 経済活動のICT化やグローバル化に加え、新型コロナウイルス感染症対応等の新たな課題に直面するなど、国税組織を取り巻く環境は急速に変化しています。
 このような環境の変化に対応するため、国税庁においては、ICTの活用による「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を目指すこととしております。
 まず、「納税者の利便性の向上」については、これまでも、自宅からパソコンやスマホなどを活用したe─Taxの利用を推進してきましたが、「新しい生活様式」の下で、納税者の皆様がより便利にスムーズに申告・納税手続を行っていただけるよう、納税環境の整備に一層取り組んでまいります。
 また、「課税・徴収の効率化・高度化」の実現に向けても、日々進化するAIの活用などのICT技術を取り入れた各種取組を更に進展させていくこととしています。
 昨今、企業においては、ビジネス環境の激しい変化に対応するため、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動きが広がりつつあります。税務行政においても、柔軟な発想の下で、デジタルトランスフォーメーションを更に大きく前進させてまいります。
 さて、間もなく、令和2年分の確定申告を迎えます。
 令和元年分の確定申告から、スマホ専用画面の利用対象者が大幅に拡大されたほか、マイナンバーカード読み取り対応のスマホでe─Taxが利用できるようになっており、多くの方に利用していただいております。
 また、キャッシュレスによる納付やQRコードを利用したコンビニ納付など、多様な納付手段を順次導入し、納税者サービスの向上を図っています。
 このように、パソコンやスマホをご利用いただくことで新型コロナウイルス感染症の感染防止という観点からも、混雑した申告会場等に出向く必要がなく、ご自宅などから申告・納税が可能となりますので、より多くの方々にご利用いただきますようお願いいたします。

新木  尾崎会長、納税協会会長として、税務行政に対する要望がありましたら、お願いします。
尾崎  税務当局においては、新型コロナウイルス感染症の対応として、申告・納付期限の延長や納税の猶予の特例などの手続について、様々な機会を通じた周知・広報や納税者の相談対応に取り組んでいただいたものと承知しております。私どもが毎年発出している「税制改正要望書」に、我が国の経済を下支えしている中小企業が今後もその役割を果たし、持続的な発展を遂げるため、今年度は新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための経済対策についても特別に要望したところです。
 経済社会のデジタル化が一段と進展する中、マイナポータルの活用による年末調整手続、確定申告手続の簡便化も進めておられます。引き続きICTやマイナンバーの活用によるデジタル化を推進し、納税者の利便性の向上に取り組むなど、納税者の視点で使い勝手の良い改善が図られますことをご期待申し上げます。
 2025年頃から団塊世代が後期高齢者となり、社会保障関連支出が一層増大することが見込まれることから、税収を自然増させるための経済政策、無駄な財政支出の削減等、具体的な施策を示した上で、中長期的な展望を見据えた税制、また、企業の国際競争力、技術力を高めるとともに経済全般の活性化が図れる税制を構築いただきたいと存じます。
 その中で、大阪国税局様をはじめ、税務当局におかれましては、引き続き税務行政を「公平」かつ「適正」に運用していただき、税に対する納税者の理解と信頼を高めていただくようお願いいたします。
3 納税協会の活動について
新木

 納税協会では、税に関する公益法人として、新型コロナウイルス感染症対策に係る税制上の措置などの周知・広報活動や租税教室の開催など、公益目的事業の推進に積極的に取り組んでおります。
 また、税の啓蒙活動や相談業務を通じて、地域に根ざした活動を展開しており、会員をはじめ納税者の方々に対しては、きめ細かな対応をすることで、より良いサービスの提供に努めています。次代を担う青年部会の活動にも力を入れており、納税協会連合会青年部会連絡協議会を中核として更なる活性化を図ることとしております。
 尾崎会長、新たな年を迎えて、納税協会及び連合会の今後の活動について、どのようにお考えでしょうか。

尾崎  昨年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、税務署との共催による年末調整説明会をはじめ各種説明会を中止せざるを得ませんでした。また、毎年11月に開催している納税表彰式などの式典についても中止に追い込まれたことは残念でなりません。そのような中、オンラインによる税務相談の実施やパソコン教室でZoomミーティングを指導している納税協会もございます。今後は、コロナ禍における新しいスタイルでの納税協会活動を検討してまいりたいと考えています。
 また、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響により開催できませんでしたが、「納税協会青年の集い」では、各地の青年部会員が租税教育活動の発表を行っています。互いの活動内容を知ることで、青年部会全体の活性化につながることを願っております。これらの活動が認められ昨年11月に、納税協会連合会青年部会連絡協議会は国税庁長官感謝状をいただき、本当にありがとうございました。
 さらに、生徒・児童に対する租税教育の一環として、「税を考える週間」にキッザニア甲子園において税務署パビリオンを出展し、消費税調査と税務広報の仕事を体験してもらうとともに、税金クイズラリー等を実施しました。特に、昨年はWEBサイトやオンライン上で税に関するクイズ大会を実施するなど新しい取組も行ったところです。納税協会が進める租税教育への取組姿勢や、納税協会そのもののPRにもつながったものと考えております。
 私ども納税協会及び納税協会連合会といたしましては、税に関する公益法人として、設立当初から掲げる「適正な申告納税の推進と納税道義の高揚を図り、税務行政の円滑な執行に寄与し、企業及び地域社会の発展に貢献する」という基本理念にのっとり、関係団体との連携・協調を密に、社会環境の変化に対応した公益性の高い事業を展開してまいります。また、会員の皆様、並びに地域の方々のご意見・ご要望に真摯に耳を傾け、地に足の着いた活動を引き続き行ってまいりますので、大阪国税局様をはじめ関係各位のご支援をお願いいたします。
新木  小原局長、納税協会に対するご意見、ご提言等がございましたら、お聞かせください。
小原

 納税協会は、税知識の普及、適正な申告の推進及び納税道義の高揚を図るという目的を掲げられ、長きにわたりご尽力いただいており、私どもにとりましても、大変心強い存在であると感じております。
 特に、青年部会は、協会活動の中核となって、活発な事業活動を行っていただいており、平成29年からは「租税教育活動」を青年部会の共通のテーマとして、租税教育の充実に大きく貢献しておられます。
 その多大なる貢献に対して感謝の意を表するため、昨年11月に納税協会連合会青年部会連絡協議会へ国税庁長官感謝状を贈呈させていただきました。
 改めて皆様のご協力に感謝申し上げますとともに、今後も納税協会の次代を担う青年部会が中心となって組織をけん引し、柔軟な発想で魅力ある事業活動に取り組まれることを期待しております。
 現在、新型コロナウイルス感染症の影響により、活動縮小を余儀なくされている状況下においても、感染防止策に配意しながら、税知識の普及のための広報活動や各種説明会などに取り組んでいただいております。
 納税協会の皆様とは、税務行政の良き理解者、良きパートナーとして、これまで以上により良い連携・協調関係を築いていきたいと考えておりますので、本年も引き続き、税務行政へのご支援・ご協力をお願いするとともに、魅力ある事業活動を展開され、企業経営及び地域社会の発展に貢献されますことを期待しております。

4 雑感
新木

 新春ですので、今年の抱負などをお聞きしたいと思います。局長は、今年はどのような年にしたいとお考えですか。

小原

 いよいよ確定申告を迎えますが、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点からも、パソコンやスマホを利用したe─Taxの普及促進に努めてまいります。
 ご自身の感染予防はもとより、確定申告会場の密度による他の方々への感染予防のためにも、利用可能な方には是非、ご活用いただきたいと考えております。
 また、確定申告会場の混雑緩和のため、会場への入場には「入場整理券」が必要であるほか、入場整理券の配付状況に応じて後日の来場をお願いすることもある旨の周知・広報を行うこととしております。
 納税協会の皆様におかれましても、会員の皆様や一般の方々への周知・広報にご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。
 さて、今年の干支は「丑(うし)」ですが、丑の勤勉によく働く姿は、「誠実さ」の象徴だそうです。
 我々、国税庁に課せられた「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を果たすためには、納税者の皆様の理解と信頼を得ることが何よりも重要であることから、これまでにも増して日々誠実に税務行政を遂行していきたいと考えております。
 納税協会におかれましては、これまでの活動が実を結び、更なるご発展を遂げる一年になることを祈念しております。

新木  尾崎会長は、どのような年にしたいとお思いですか。
尾崎

「Build Back Better(より良い復興)」の年にしたいと思います。我々はコロナ禍で多くの機会を失いました。例えば、若い人は教育や就学の機会を失い、社会において長期にわたって不利益を被る可能性があります。国際労働機関(ILO)は、世界中で「ロックダウン世代」といった、教育・就学の機会を失った若い世代の出現を警告しており、長期に禍根を残さないためにも、日本のみならず世界は一刻も早くコロナ禍から脱出しなければなりません。
 一方、コロナ禍により、今まで停滞していたデジタル化が飛躍的に進んでいく可能性が高まっています。関西の企業は進取の気性を活かして、元のビジネス様式に戻すのではなく、ポスト・コロナの社会において新しいビジネスとイノベーションを生み出していくべきだと存じます。私ども納税協会も、これからの日本社会を支える企業を、税務にかかわる側面からご支援することを通じて、関西ひいては日本経済の発展に貢献してまいりたいと存じます。

新木

 本日はお忙しいところ、大変有意義なお話を伺うことができました。
 今年も、納税協会連合会は、納税協会とともに会員の皆様が加入して良かったと思っていただけるような、魅力ある事業活動ができるよう努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 本当にありがとうございました。

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