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トピックス
新春対談
飛躍する関西
2007年の関西経済、税、納税協会の展望

大阪国税局長
川北 力

財団法人納税協会連合会会長
野村明雄

【司会】
財団法人納税協会連合会常任副会長
吉田實男

(敬称略)



1.関西経済の展望

吉田 今日は新春の対談ということですので、関西経済、税、そして納税協会について、ざっくばらんにお話いただければと思います。
 さて、我が国経済はここ数年、緩やかな回復基調を維持しており、その景気拡大期間は、戦後最大の「いざなぎ景気」を超えるほどまでになっています。しかしながら、国外情勢は、米国経済の不透明感、原油価格の高騰など、依然、予断を許さない厳しい状況が続いており、好調な経済に影を落とすのではないかという懸念材料もあります。
 このような日本経済全体の動きの中での関西経済の現状と今後の展望について、お二人はどのようにご覧になっていますか。
野村  わが国全体の経済状況としましては、先ほど吉田副会長からもご指摘がありました通り、力強い景気回復を続けていると認識しております。低迷に苦しんだ90年代の、いわゆる"失われた10年"から、痛みを伴う血のにじむような努力によって企業が徐々に力強さを取り戻し、さらに好調な米国、アジア経済に支えられた輸出産業が牽引役となって、ようやく今回の長い景気回復が実現されました。
 足元の関西経済についても同様で、概ね堅調に推移していると見ております。企業業績が好調さを維持しているほか、2006年の上半期には兵庫県の新規工場立地件数が全国で最多を記録するなど、設備投資計画の伸びでは全国を上回る勢いを見せており、関西経済がわが国経済を牽引している姿がうかがえます。加えて、設備投資や雇用情勢などの面で先行きに明るい見方が広がっている点などを考えますと、いよいよこれまでの「景気"回復"」から、さらに一歩進んだ「景気"拡大"局面」に入ったと言ってよいのではないでしょうか。
川北  関西経済は、この一両年堅調さを維持しており、景気の回復基調が続いてきました。
 ちなみに、私どもが毎年発表している路線価でも、大阪・京都・神戸といった大都市での上昇が見られます。その要因等については様々な分析がされていますが、マンション建設の活発化に伴う住民の「都心回帰」に加え、商業ビルを中心に不動産投資家の関心も高まっており、大阪を中心とする関西経済の潜在能力を見直す流れが生まれているとも言われています。野村会長が言われた工場立地の「関西回帰」も、当地域の「底力」を示すものだと思います。
 大阪国税局の税収も、過去に比べればまだ厳しい水準ながらも、回復傾向にあり、関西経済の回復を示しています。とりわけ好調な企業収益の伸びを反映して法人税収が伸びました。
野村  しかし、一方では、米国経済の減速や不安定な原油価格の動向、あるいは近隣諸国との外交課題など、先行きに対する様々な懸念材料も存在します。何よりも気がかりなのは、中堅・中小企業の業況感の回復が足元・先行きともに遅れがちな点です。わが国の経済は、なんと言っても全企業の9割以上を占める中堅・中小企業が基盤となって支えられております。
 今回の景気回復を単に循環的なものにとどめることなく、息の長い安定的な成長軌道に乗せるためにも、中堅・中小企業への目配りを欠かすことのない慎重な経済・金融政策の舵取りが求められていると考えております。
川北  各地域の納税協会の皆様から地域経済の状況やそれぞれの事業の業況をお伺いしますと、最近は良くなってきたという声がある反面、良くなった実感が依然としてないという声もありました。「今回の景気回復に実感が伴わない。」ということは、新聞等でもとり上げられていました。
 地域経済の活性化は、私どもにとっても大きな関心事です。先ごろ地域団体商標制度により「京人形」や「和歌山ラーメン」といった地域ブランドが商標登録されるという話がありましたが、京都をはじめとしてさすが関西の伝統の重みと申しましょうか、最初に登録査定を受けたと公表された52件中に近畿2府4県の地域ブランドは20件もありました。地域の伝統・特色というものを活かせる機会も少しずつ整いつつあるのかなと思います。
 関西経済の今後の展望については、今、野村会長から力強いお話がありました。政府においても、「成長戦略」の検討が進められています。新しい年が、中堅・中小企業の経営、あるいは個人の生活レベルも含めて、景気回復の実感が広がる持続的・安定的な成長の年になってほしいものです。


2.社会経済情勢の変化と税務行政の対応
吉田  局長にお伺いします。昨年は、消費税の免税点引下げや年金課税の見直しによって、新たに申告者となる方に対する円滑な対応が求められました。また、複雑化する社会経済情勢への素早い対応も、常々求められていることと思います。
 そのような状況の中、最近では、更なる納税者利便の向上に向けて、「e-Tax」をはじめとするオンライン利用の普及促進に取り組んでおられますが、こういった今後の重点的な施策・取組みについて、お聞かせください。
川北  多様化・複雑化する社会経済情勢の中、私どもは、納税者の皆様が自ら正しい申告と納税を行っていただけるよう、さまざまな納税者サービスの充実に努めています。
 昨年は、消費税の免税点引下げ、公的年金等控除の見直しなどにより、多くの「新しいお客様」をお迎えすることとなりましたので、従来以上にきめ細やかに広報・相談・指導といった施策に取り組みました。
 納税協会の皆様には、改正消費税法の周知や説明会の開催、相談窓口の開設、税理士による相談日の開設、消費税一声運動の展開、チラシやポスターの製作や配布などに積極的にご協力いただきました。お陰をもちまして、無事乗り切ることができました。今年も引き続きご協力のほどよろしくお願いします。
 それから、納税者利便の向上には、やはりIT社会への対応はかかすことができません。税の情報を得るのも、電話による相談や、窓口で職員に相談したり備え付けのパンフレットを入手したりするといった従来からの方法に加え、最近はインターネットによる「タックスアンサー(よくある質問)」の利用件数が大幅に増加しています。さらに、確定申告期には多くの皆様が、確定申告書を出力されるなど国税庁のホームページを有効に活用いただいております。
 これらは、やはり、インターネットが大幅に普及したことが大きな要因であると考えます。これからも、税に関する情報提供の場として、また、皆様から税に関するさまざまなご意見もいただく情報交換の場として、皆様の利便性を考え、分かりやすく充実したホームページの作成に努めていきたいと思います。
 こうしたIT化の取組みの中で、現在国税庁が最重要課題としておりますのがe-Tax、国税電子申告・納税システムへの取組みです。
 e-Taxは、自宅・オフィスなどからインターネットを利用して申告や納税などの手続を行うことができるシステムであり、平成16年6月から全国で運用を開始しています。
 このe-Taxは、今後、政府全体で電子政府を推進していくという動きに沿ったもので、平成18年1月に政府のIT新改革戦略において、世界一便利で効率的な電子行政の実現のため、主な手続について平成22年度までに50%以上のオンライン利用率を達成するという大きな目標が設定されました。
 これを受け、国税庁では、特に利用者ニーズが大きい手続として消費税額が4800万円を超える大規模法人の消費税申告、給与の支給人員50名以上の法人等の給与の所得税徴収高計算書の提出、金融機関等の毎月申告の印紙税申告及び酒類製造業者の毎月申告の酒税申告については、平成20年度までにオンライン利用率が50%となるよう目標を設定しています。
 国税関係手続のオンライン利用率は、平成17年度の実績が0.3%ですので、大変ハードルの高い目標ですが、この目標を達成するため、すでに平成18年11月からは電子申告による還付申告については3〜4週間で還付できるよう対応しており、今後も確定申告期間中の受付を24時間とすることや、税理士関与のある納税者の方については、納税者本人の電子署名を省略するなどの改善に取り組んでいるところです。
 税や会計は、ITの利用にはなじみやすい分野であると思います。納税協会の皆様にもご趣旨を是非ご理解いただき、e-Taxをご利用いただければと思います。
吉田  野村会長、納税協会会長として、国税局や各税務署に対する要望はあるでしょうか。
野村  一言で言うと、「開かれた国税局、税務署であってほしい」ということに尽きます。
 現在、わが国は本格的な人口減少社会を迎え、少子高齢化や財政問題など、非常に大きな課題を抱える転換点にあります。税制についても、当然わが国の進むべき方向に合わせて、税体系や税率なども含めたあり姿が大きく変化していくことが予想されます。
 税制が大きく変わろうとしている中で、国税局や税務署などに対して「税を納める」ということに対する納税者の理解を得ることが、今ほど求められている時はありません。
 当然、納税者の理解を得るためには、個人や法人も含めたすべての納税者に対する情報公開の徹底はもちろんのこと、納税者側のニーズを積極的に吸い上げる仕組みの充実も必要です。税務当局には、納税者に対して一層の透明性を担保しながら、それぞれの立場でできることに精一杯取り組んでいただく必要があるのではないでしょうか。
 例えば「電子申告制度」について言えば、納税者の負担を減らしつつ、スリムな税務行政を目指すためには必要不可欠な制度であると思います。先ほど川北局長も普及拡大のため様々な改善に取り組まれているとおっしゃいましたが、利用者にかかる負担をできる限り減らしていただくなど納税者のニーズを十分に反映した改善に努めていただきたいと思います。
 また、各地の税務署については、納税者が税を納めに来るのを待つだけではなく、タウンミーティングなど情報交換の機会を設けて納税者の声を自ら集めにいくような取り組みも必要だと思います。少しでも多くの納税者に税の中身を理解してもらうために、積極的にコミュニケーションを図るよう努めるべきではないでしょうか。
 もちろん、納税協会といたしましても、納税者と税務当局の橋渡し役として、税制の内容の積極的な周知や納税者のニーズ収集など、具体的なお手伝いをしていかなければならないと考えております。

3.納税協会の活動について
吉田  納税協会連合会は、昨年、創立60周年を迎えたことから、これを記念したフォーラムの開催や、納税月報特別増刊号の発行など、記念事業を行いました。また、「税に関する懸賞論文」の募集も、今年は3回目となります。
 一方、各納税協会においては、税の啓蒙活動や相談業務を通じて、地域に根ざした活動を展開しており、会員に対しては、きめ細かな対応をすることで、より良いサービスに努めています。
 さらには、昨年6月に公益法人制度改革の関連3法が成立し、平成20年から施行されますが、納税協会及び連合会の最重点検討課題として、公益認定に向けた対応に取り組んでいるところであります。
 野村会長、新たな年を迎えて、公益法人としての納税協会及び連合会の今後の活動について、どのようにお考えでしょうか。
野村  当連合会及び各協会は、創立以来、適正な申告納税の推進と納税道義の高揚を図り、企業及び地域社会の発展に貢献するという確固たる理念のもと、税のトータルアドバイザーとして、また、オピニオンリーダーとして積極的に活動してまいりました。今後もこの基本理念は変えることなく次代に受け継いでいくべきであり、その上で、時代の変化に対応して自らも変革していくことが大切だと考えます。
 先ほど吉田副会長から話がありましたように、現在、公益法人制度改革への対応として新しい公益認定法人へのスムーズな移行が大変重要な課題となっております。公益認定法人となるには、法人の目的や事業、管理運営についての明確さ、適切なガバナンス、情報開示の強化などが厳しく問われますが、なかでも、「事業の公益性」と「事業運営の透明性」を高めることがより強く求められます。
 納税協会では、すでに、税法説明会やパソコン会計教室の開催、税に関する論文の募集など、会員だけでなく非会員の方も対象にした事業を行っておりますが、地元の学校で租税教室を開催するなど、地域に貢献できる活動をさらに充実していき、「事業の公益性」を高めていく必要があります。また、「開かれた納税協会」として社会からの信頼を高めるためにも、情報公開を徹底して「事業運営の透明性」を確保し、社会への説明責任を果たしていかなければなりません。今後、こういった活動を継続していき、地域社会における存在価値を高めていきたいと考えています。
 協会におけるもう一つの課題は、会員の増強であります。各協会の会員数を見ますと、増加している協会もありますが、全体としては減少傾向にあります。会員を増強していくには、会員はもちろんのこと、非会員の方ともコミュニケーションを図り、生の声を聞いてニーズが何なのかを把握し、そのニーズに的確に応えていく必要があります。そして、その上で、協会の事業を十分理解していただくよう情報発信に努めなければなりません。当連合会としましては、新聞紙上での協会の活動紹介や電車・バスでのポスター掲示、「納税協会フォーラム」の開催をはじめ、様々な場、方法で協会のPRに努めてまいりますが、会員の皆様にも、より多くの方に協会の事業や特徴などをお伝えいただき、会員の増強にご協力いただきたいと願っております。
 国税局の皆様におかれましては、こうした私どもの活動に対して、引き続きご指導・ご協力をよろしくお願いいたします。
吉田  川北局長。納税協会に対するご意見、ご提言等がございましたら、お聞かせください。
野村  納税協会は、「税」と「地域」に対して多大の貢献をされています。また、私どもは、適正申告と納税道義の高揚という「志」を同じくしていると思っています。
 JR長浜駅の新駅舎に、長浜納税協会が製作したモニュメント「光の塔」が飾られていました。納税協会の「税」と「地域」への貢献を象徴するものでしょう。また、大阪市内ブロックの19の青年部会は、まとまって「e-Tax推進宣言式」を実施されました。協会活動全体の活性化に向け、青年部会としての活動、複数の協会が協調して行う活動、いろいろな取組みがなされていると伺っています。2つだけ言及いたしましたが、全協会のご努力に、あらためて敬意を表します。
 納税協会連合会としては、昨年は、「財団法人納税協会連合会創立60周年記念フォーラム」の開催や著名人や税務関係者を招いての講演会、意見交換会などの事業活動を実施されていますが、今後とも会員のニーズにあった取組みを積極的に実施していただくとともに、その活動を広く周知していただきたい。そうした取組みの中で、納税協会活動への参加者・賛同者が一層増えていくものと思います。
 私どもも懸命にその職務を果たしてまいりますが、健全な納税者の団体としての「納税協会」が社会に果たす役割は、誠に大きなものがあります。
 戦後まもなく創立された納税協会連合会も昨年で60周年、いわば還暦を迎えられたわけで、十干十二支の暦を一巡し、新たな出発点に立たれたということであります。
 おりしも公益法人制度改革への対応という大きな転換点を迎える中、納税協会指針として掲げられている「健全な納税者の団体として税知識の普及に努め適正な申告納税制度の推進と納税道義の高揚を図り企業および地域社会の発展に貢献する」という目的に向け、更なる発展を目指していただきたいと思います。

4.雑感
吉田  最後に、新年に向けての思いなど、お聞かせいただければと思います。
野村  今年の干支は「丁亥(ひのとい)」ですが、「丁」という字は、従来からの動きが続いている一方で、対抗する新しい動きがあることを示しており、新旧両勢力の衝突を意味しています。一方、「亥」という字は、植物が実の中に堅い核をつくり、その中にエネルギーを充満させている様子を表しており、いつ暴発するかわからないエネルギーを秘めている状態を意味しています。
 これらのことから、「丁亥」の年は、新旧がぶつかり合うことによって何か大きな事象が生みだされるかもしれない、と考えることができます。例えば、今年は、以前から「2007年問題」と言われていた、団塊の世代の大量退職が始まる年であります。産業界でもこのような高齢者の活用が大きな課題となっていますが、新しい感性を持った若いエネルギッシュな世代の力と、長年培ってきた技術やノウハウ、多様な経験のある高齢者の力を結集すれば、より大きな成果を生み出すことができるはずです。
 納税協会におきましても、新旧会員の力を融合させて、協会全体の活性化や地域社会に貢献できる活動の展開に取り組んでまいりたいと考えております。
川北  さきほど、野村会長から、「開かれた国税局、税務署であるべし」とのご提言がありました。税務行政をとりまく環境がますます厳しくなる中、本年はこれまでにも増して、納税者ニーズを的確に把握する努力や、納税者の皆様のご理解を得る努力が大切になると思います。本年も適正で円滑な行政運営に努めますので、納税協会の皆様におかれましては、引き続きご理解のほどお願いいたします。
吉田  ありがとうございました。




(納税月報 2007年1月号より)