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トピックス
納税協会フォーラム2005
明日の中小企業を考える〜市場開拓と人材育成〜

コーディネーター

上野祐子
(株)マーケティングダイナミクス研究所代表取締役。マーケティング企画・調査・商品開発、市場開拓を専門に、国や自治体のビジョン策定にも携わる。


パネリスト

三木幸男
大阪市内ブロック青年部会連絡協議会会長/(株)三木商店代表取締役社長/パイプや継手の卸問屋の二代目社長。旧態依然とした社内体制を思い切って変革し、実力主義で売上げ占有率3位をめざす。

寺田弘和
京都ブロック青年部会連絡協議会会長/(株)八光館店主/風光明媚な桂川上流の川辺にある丹波一の規模を誇る老舗料理屋を経営。老舗の伝統にこだわることなく、お客様の要望に応じた事業を展開。

柳本一郎
神戸市内青年部会連絡協議会副会長/マルヤナギ(株)小倉屋柳本代表取締役社長/市場ニーズに呼応した商品づくりに力を注ぐ。従業員それぞれが、持てる力を存分に発揮できる風土づくりをめざす。

浅田錦治
奈良県青年部会連絡協議会会長/浅田木材(株)、(株)ワイ・エー企画、潟}イクロアイ代表取締役/家業の製材業を営む一方、情報関連分野のベンチャーを次々と立ち上げ、事業拡大を図る。

木本佳孝
和歌山県青年部会連絡協議会会長/木本産業(株)代表取締役/LNG、LPG、石油等の備蓄タンク及びコンベアの製造・メンテナンス業。3K職種だが、資格取得の奨励など魅力づくりに力を注ぐ。

棚橋勝道
滋賀県青年部会連絡協議会会長/(株)棚橋食品代表取締役/明治42年創業の豆腐製造業。価格競争やニーズの多様化に対して、消費者のニーズを反映した作り手の思いの伝わる商品開発で対抗する。


1. 市場開拓
上野  関西経済も上向きのベクトルを見せてまいりましたが、中小企業の経営環境は、依然、多くの課題を抱えています。特に大きなテーマになっているのが、国際化やものづくり環境の構造変化によって、質的にも量的にも大きく変化している「市場開拓」と、従来の労働感というものが変わりつつある中での「人材育成」です。
 本日は、この「市場開拓」と「人材育成」について、納税協会青年部会の代表者の方々に自社での取組みなどを発表していただきます。
 まずは、市場開拓についてお願いします。
   
情報発信で攻めの営業を展開
寺田  何といっても京都の京料理はブランドですから、全国から京料理を食べに人が集まります。しかし、私どもの店舗は京都から亀岡の方へ約20分の場所にありますので、いかにしてこのお客様を呼び込むかが勝負になります。もちろん、地元のお客様は、一番大事なお客様ですが、全国から来られるお客様も何とかして呼びたいと。
 そこで、何か名物をということで、今年は自社のホームページで丹波の松茸の宣伝をしたところ、これが評判を呼んで、全国から多くのお客様が来られました。もう、老舗の料理屋だからといって構えているばかりでは、お客様は来なくなりました。これからは、やはりインターネットでも何でも、うんと活用して宣伝し、攻めの商売をすることが大事だと思っています。
   
ブランド力の向上と新たな商品開発を
棚橋  豆腐業界は、非常に価格競争が厳しくなってきていて、ここ数年で同業の大手が相次いで倒産・廃業しています。過度の廉売によって、非常に収益性が悪化する一方で、原材料が高騰しているのです。具体的には、1俵60sの大豆で作った豆腐の売上げが、従来は大体3万円でしたが、今はひどいと1万8000円ぐらいです。今、国産大豆は1俵1万8000円ですので、原材料と売上げが同じというようなことになっています。
 そういう中で、私どもは、商品力とブランド力を高める努力をしており、新しいビジネスモデルに転換を図りつつあります。
 また、豆腐を作る際に出る産業廃棄物の処理問題もあって、コスト増の要因が非常に高まっているのですが、この産業廃棄物を転用するための商品開発を進めているところです。
   
選択と集中で価格競争を脱する
柳本  食品業界全般にいえることは、少子高齢化が進む中で、量から質へ、安全、安心、健康、美容と、非常にお客様のニーズの多様化が進んでいるということです。
 決定的なのは、やはり価格競争の流れです。価格が安いということも確かにお客様のニーズなのですが、ともすれば棚橋さんのお話にあったように、濁流のような価格競争の嵐に飲まれてしまうのです。しかし、これに対抗するために非価格競争の商品開発をめざしても、そう簡単にできるものでもありません。
 当社としては、まず、「価格」よりも「味」そして「品」質を磨き上げていくことに集中しています。そして、見えざる資産といわれるブランドやリピーターのお客様、技術、仕組み、ノウハウなどの知的資産、そして人材を大事にし、それらを育む企業風土を培っていきたい。その結果、企業価値も高まっていくことと思っています。
   
変化する市場の潮目を読む
浅田  家業は製材業を主とする木材業なのですが、平成のはじめごろ、その製材業のオフィスにパソコンを導入しました。この時、これはもう絶対に社会を牛耳る存在になると確信し、これから訪れる新しい時代の変化に対応していくために、ITベンチャーを立ち上げました。
 私どもの会社が開発している製材関係の販売管理のソフトは、木材業界という全国の市場が相手です。医療機関などで使われるネットワーク型の受付番号発券システムも開発しており、これも全国が市場です。一方、コンピュータ関係のソリューション開発やコンサルティングは、身近な限定された市場です。まず、こういうことをしっかり認識することが大事だと思います。
 そして、時代が変化するということは、インフラや社会構造自体が変わっていき、衣食住に使われるような商品構成もすべて変わっていくということです。CDが出だした頃のレコードのように、その商品が新しいインフラの中で陳腐化してしまった場合、その商品は市場での力を失うわけです。
 どんどん進歩するインフラの下でどのような商品が望まれているのかということを考えることが、商品開発の鍵であり、我々が生き残る道じゃないかと思っています。
   
他社とは異なるサービスを提供
三木  一般的に、商品の流れはメーカーから商社を経てユーザーへというのが通常でした。ところが、今ではメーカーから直接、消費者へと流れます。今後、消費税が上がってくるとすると、問屋はますます厳しくなり、その必要性が問われる時代になっています。
 今、一番悩んでいることは、中国からモノが入ってくるということです。安いということも当然ありますが、加えてそれが流通を無視して入ってくるということです。次に東京一極集中です。地方でビルを建てるという話があっても、全部、東京の本社伺いで、東京の施工会社に発注され、残り物だけが地元業者に流れていくというような状況です。
 そのような状況の中で、我が社では、他社が扱っていない、1年に1回しか出ないような品物も扱い、かつ、納品までのスピードを上げることで生き残りを図っています。
   
稼げるときに稼ぐ―野武士戦略
木本  私どもは、主として東京、大阪において、エンドユーザーからタンクの需要動向を確認し、それを持ってタンクメーカーや重工業メーカーを回るという受注活動をしています。
 仕事の量に波があって、山ほどある時もあれば、まったくない時もあります。まるで野武士のようであります。戦になれば村を出て一所懸命戦い、終わったら戻って農耕をするというわけです。現在は仕事がなく、皆、和歌山の方に戻ってきて、さて何を耕そうかなと悩んでいるような状況です。
 職人の高齢化問題に対しては、若手の資格取得を促進するために取得費用は全額会社負担とするばかりでなく、取得に際して手当を支給しています。また、ベテランの職人とペアを組ませて、技術の伝承を促しています。
 最近、日本を代表するような企業の重大災害が相次いで発生していますが、我々も、事故が起こるとそのような重大災害につながりかねない業種ですから、常に個人の不安全行動や会社が担当すべき不安全状態をなくすように努力をしています。


2. 人材育成
上野  ありがとうございます。次は、人材の確保と育成について、それぞれの会社の戦略を伺いましょう。お願いします。
   
仕事への誇りを持てる環境づくり
棚橋  ここ20年ぐらいかけて、人材の若返りを図りましたが、きちんと技術移転ができたかどうか、現在も不安に思っています。私どもの業種は非常に定着率が悪く、長くて5年、早いと2〜3年で人が入れ替わるからです。
 とにかく、豆腐屋は朝が早く、365日操業しなければなりません。若い人たちにしてみれば、日曜日に彼女とデートすることも、家族と外食することもできないのです。そのような社内の空気に長年触れていると、苦しくても耐えるという能力がだんだん長けてきます。若い人たちはだんだん夢を語らなくなり、その状態を手放しにしておくと、全体としてそういう方向に流れてしまいます。
 そのため、我々経営層としては、いかにして夢や自信を持たせてやれるかに、日々心を砕かなければなりません。例えば、ものづくりの喜び、自分で技術を習得して自分が作ったものがお客様に届いているという実感を持たせてやる、ISOやJASの認定の取得を通じて、小さな会社でもやればできるという自信を持たせてやるというように、自分たちはこの仕事を通じて社会に貢献しているという実感を持てる題材を常に提供するということ、間接部門や営業部門であっても、商品開発の提案を通じて常にものづくりに接している、それに関与しているという思いを持てるような取組みを行っています。
   
人材の適性を見抜く力が重要
浅田  私どもの商品は、目に見えない商品です。目に見えない商品は形がありませんので、顧客の要望を的確に理解し反映することが大事になってきます。導入したシステムを実際に使う担当者、その分析結果を見る管理者、伝票を受け取るお客様、いろいろな人がそのシステムを使うことにかかわっているわけで、それらの要望をすべて網羅して、初めて満足していただける商品ができるわけです。
 当然、人材には、そのようなものをつくることができるスキルが求められるわけですが、私は、人材の採用に当たっては「適性」を重視することが、最重要項目だと思っています。もちろん経験のある人を採用するにこしたことはないのですが、経験がない人を採用した場合でも、適性があるならば、ある程度できることがあるからです。そのようにして採用した人材を、実際の作業を通じて育成を図っています。
   
和歌山の地域特性を生かす
木本  人材育成の話からはずれますが、県内の状況を紹介させていただきます。
 まず、県が緑の雇用事業の推進をしており、林業で少し雇用があります。農業、漁業も少しはあります。それ以外の仕事は、もっと少ししかありません。どうしても公共事業が中心になりますが、それにしてもほとんど大阪の企業が持っていき、おまけの部分を和歌山の企業がやるというのが現状です。
 人口は、平成7年をピークに減少しており、現在は106万人ぐらいです。うち40%が和歌山市内です。山間部では、若者はおろか、人が本当にいません。同窓会を開くと成績優秀な上位10人は和歌山にいません。
 しかし、和歌山にはいいところもたくさんあります。世界遺産に登録された紀伊山地、黒潮流れる膨大な太平洋と、美しい紀ノ川や熊野川です。おいしい魚、おいしいみかんもあります。
 この和歌山をどうするか。地域特性を活かしながら、知恵を出すか、汗を出すかして、頑張っていかなければならないと思います。
   
流動的な専門職人材を活用
寺田  板場の仕事は大変なものです。まずは鍋洗いからで、上下関係が非常に厳しい。朝は早くから夜は遅くまで、もちろん日曜日など休みなし。従来、そういう環境の中で、一流の職人が生まれてきましたが、今の人はついてこられません。
 好きこそものの上手なれといいますが、本当にそれが好きで目標に向かって努力するという人が、だんだん少なくなってきているようです。私どもの会社でも、最初は夢を持って入社してきますが、ひどいのは3日でアウトです。
 私は板場で苦労してきた人間ですから、同じように職人をつくりあげるという夢を持っていました。しかし、最近では、立派な料亭で育った職人を引き抜いて、彼らに次の子を育ててもらえばいいと考えています。経営者はそのようなことにはエネルギーを使わないほうが良いと、5年ほど前に頭を切り換えました。
 また、板場さんの終身雇用は考えていません。もし、終身雇用であったら、その店はその板場さんの味をずっと続けることになります。今の時代、ある程度の年月がたってきたら、新しいものに変えていかなければならないのです。
 しかし、まったく人材の育成を考えないということではありません。先ほどの棚橋さんのお話にありましたが、経営者として、感動を生むようないい仕事を与えていくことで、人材の育成を図れればと思っています。
   
徹底した実力主義で若手を伸ばす
三木  二代目というのは、一般的にあまりいいイメージはありません。先代の時から会社を支えてきた番頭は、苦労知らずの二代目の私の命令など聞く耳を持っていませんでした。しかし、時代の変化に対応していないマンネリ化した仕事をしていたのでは、ジリ貧になるのは目に見えて明らかでした。
 私は、いったい私の通信簿は何だろうと自問自答した結果、とにかく利益を出すことだという結論に至りました。
 そして、利益を出すために、まず、番頭クラスを配置転換しました。これによって、若手がどんどん伸びてきました。私は、その若手のモチベーションを高めるために、責任と権限を与え、信賞必罰を実行しました。いわゆる実力主義です。
 入社3年目でも、営業に出て先輩より稼ぐ人間がいます。逆に、倉庫の中で朝から晩まで品物の積み下ろしをしているような人間も出てきます。ついてこられない人には辞めていただくしかありません。そうすることでできる人間にサラリーを出すことができるのです。
 厳しいと思いますが、そういうことをやりながら、いい人材を確保していきたいと思っています。
   
従業員の人間性を育む企業風土を醸成する
柳本  人材育成に非常に大きく関わるものに会社の経営理念、フィロソフィーというものがあると思います。実は私は、数年前から京セラの稲盛和夫さんの盛和塾で、経営理念について勉強させていただいていまして、ちょうど1年ほど前に、マルヤナギフィロソフィーをつくりました。京セラさんのフィロソフィーに準じた形で78条あります。
 抽象的ですが、個人それぞれが仕事を通じて人格・人間性を磨き、心を高める努力をすること。その結果、良い企業体質、良い企業風土の醸成をめざすとしています。
 経営目的は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、良い品を安く作り、広く社会に貢献すること」。社会への貢献なくして、従業員の幸福はなく、同時に、従業員の幸福なくして、社会への貢献の継続もあり得ません。人間の持つ無限の可能性を信じて、それぞれの人の持てる力を存分に発揮する。また、そのような風土づくりに取り組んでいます。そして、考え方のベクトルを合わせて、より高い目標に向かって前向きにチャレンジすることとしています。
 根本的に、人は考え方次第で意欲・やる気、そして結果が大きく変わっていくものです。「やればできる」そう思って信じてやれば、必ずできるのです。「成功するまであきらめるな」あきらめなければ、最後には成功すると信じて頑張っています。
   
上野  ありがとうございました。
 それぞれ、市場について、人材について、いろいろなお話を伺いました。
 最後の柳本さんがおっしゃった、仕事を通して従業員と共に成長していこうという姿勢、前向きに常にチャレンジしようという精神は、すべての方のお話のベースに共通してあるのではないかなという気がいたしました。
 皆様、ありがとうございました。




(納税月報 2006年2月号より)