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フォーラム納税協会60
第1部 分科会
成功事例から中小企業が抱える問題解決の核心に迫る
 
 納税協会連合会では、平成15年10月6日、NHK大阪ホールにおいて、「がんばれ関西・中小企業! 勝者の道を探ろう。」と題して、納税協会創立60周年記念「フォーラム納税協会60」を開催しました。
 第1部は、3つのテーマに分かれて分科会を開催。第2部はパネルディスカッションが行われました。(第2部の内容は、平成15年12月号に掲載)
 前号より3回にわたって、この第1部分科会の内容を紹介します。


テーマB上手な産学連携・技術開発の事例


事例発表1 「産産・産学連携で新しい産業のイノベーションを起こす」
  クラスターテクノロジー株式会社 代表取締役 安達 稔 氏
   
   最先端電子機器の樹脂部品の製造を手がける同社は、技術力の連携を重視し、大阪産業大学と組んでナノ金型製作に必要な超微細加工の新技術を開発。世界に通用する技術開発をめざし、ビジネスモデルの取得に取り組んでいる。
   

 

 

■ナノテクノロジーへの展開

 1991年、以前私がいた安達新産業(東大阪)と長瀬産業が提携し、茨城県を拠点にクラスターテクノロジーを設立しました。そこでは、当時、爆発的に売れていたソニーの8ミリビデオの機能部品を供給していました。96年、分離独立、03年には、伊藤忠商事と業務提携して増資し、現在、資本金3億3180万円、東大阪の大阪開発センターを本社に、茨城には生産工場を有しています。従業員は、関東工場約20名、本社30名で、そのうち約20名が研究開発の人員で、マスター、ドクターも多く非常に高い開発比率が特徴です。

 取扱いの主なものは重電機関係、画像映像通信その他精密関係です。私は、98年あたり日本が得意だったCD、CD│R、DVD、その他の光ディスク、ビデオ関係の機器がどんどん海外に流出していくなど、大企業の利益追求に非常に危機感を抱いていました。そうしたこともあって00年にかけてナノテクノロジーの展開に取り組み、10億分の1の微細加工のテクノロジーを開発し、技術ライセンスを取得していこうと動き出したわけです。

■産産・産学のコラボレーションを

 私どもは、お客様に合った材料開発をして、微細な金型づくりの加工、精密測定、デバイスづくりをし、製品を提供するという形の一貫開発で製品をつくっています。そこに今度はナノテクノロジーの展開を新規機能として加えました。

 イノベーションを起こし、世界に通ずる経営者として知的産業が生まれるようにしていく。世界環境、開発資金の問題及び世界の情勢、ビジネスネットワークと、共に咲く喜びという信頼関係を持って、これからの産産学の連携を、1社だけではなく2社3社というコラボレーションを考える。こういった展開をしようとしています。

 産学連携では、いろいろな大学とのコラボレーションは相当前からやっています。たとえば30年前から大阪大学と世界で初めての有機・無機の分子オーダーの重合高分子材料開発も行っています。将来のビジョンとしては、われわれの技術を結集し融合化させ、解析計測評価技術を伴ったナノのマイクロデバイス技術開発、超精密部品の製造技術の開発をし、国内、海外にない日本型の産業をイノベーションとして起こしていく。世界の中枢デバイスの開発企業として展開し、世界に通ずるオンリーワン経営をめざしています。

■ナノテクは横割産業

 ナノテクノロジーはライフサイエンス、バイオテクノロジー、環境エネルギー、通信情報関係、ほとんどの産業分野の横割産業につながります。

 バイオの分野でもいろいろ賞もいただいています。今年4月、フランスでの「全世界バイオスクエア2003年」という学会で、ナノバイオの発表もさせていただきました。

 また、小泉総理が私どもの工場を見学された時に見ていただいたのが、インクジェットのデバイス開発です。噴射する溶液の1滴が1ピコリットル(1兆分の1リットル)で、1秒間に1万滴噴射する。それを使っていろんなバイオテクノロジーやエレクトロニクス等の配線パターン、また液晶に代わる次世代のEL画像パネルといったものに使用する装置です。このノズルから生体微粒子、金属微粒子あるいは有機材料とか、いろいろな材料を噴射します。たとえば金属であれば微細な配線パターンが直接的に描ける。新しい産業分野で新しいイノベーションを起こすような使い方をしていこうということです。

■地域コンソーシアムを含めた産学連携も

 さまざまな大学と技術開発をしている中、太陽電池のシリコンを実証技術をもって実用化しようと、私どもがベンチャー企業(クリーンベンチャー21)と龍谷大学等と仕組みを作り、管理法人は東大阪商工会議所で地域活性化の第1号として地域コンソーシアムをつくりました。同じく地域コンソーシアムでは、中国に流出した基盤関係を取り戻すべく、私どもが管理法人になり、東大阪微細加工研究会のメンバーが加工部門で参画、伊藤忠等、京大、大阪産業大学等も加わり、産官学含め、国の展開、海外に通ずる展開を図るべく、動き出しています。

 産業クラスターという面では経済産業省の微細金型研究会の委員をしていますが、新たな技術融合、多くの大学とのコラボレーションで、既に相当実績をあげています。また関西ではナノテクノロジー推進会議の委員、また国内全体として経済産業省の指導によりナノテクノロジービジネス推進協議会を設立され、私は副会長をしていますが、大企業、国の研究機関、大学も入り約300社近くが参加、国家施策として推進していくということです。2、3年以内の立ち上げを目標としていますが、その中でどう中小企業、ベンチャーを立ち上げていくか、そのための役割を考えているところです。


事例発表2 「夢を現実化する技術が大学にはある」
  株式会社ダン 代表取締役社長 越智 直正 氏
   
   靴下の卸・製造業として、専門店「靴下屋」をフランチャイズ展開。IT活用により、SCM(サプライチェーンマネジメント)システムを構築。高品質な靴下を自動で縫製するために、国内の大学とロボットを共同開発している。
   

 

 

■産学共同で大切な研究者の資質

 私は、愛媛県の中学校を卒業後、15歳で大阪に出てきて靴下業界に入りました。小学校では神童と言われ、学校では先生がもう勉強せんでよろしい、後ろに立っていなさいと、得意な学科はほとんど廊下に出てやっていました。(笑い)

 ところが、この頃、日本人はむずかしいことばかり勉強して、自分ができる可能性のあるものをなくしてしまう傾向にある。「道は近きにあり、ことは易きにあり」です。

 産学共同についても、1ミリの穴が1メートルの大きさくらいの穴に見えるというものができたというので、それで学校と企業とが組んでやったらどうかと話がきた。靴下というのはつま先を縫うのに非常に手間がかかります。私が丁稚している時は全部「かがり」といっていちいち拾っていったのですが、このつま先を縫うのを現在は全部ミシンで縫うのでぬい山ができてしまう。だから商品の質がどんどん落ちていっている。そういう中で私はずっと考えていました。それを立命館大学がやってくれるというので行きました。

 産学共同で一番大事なことは、大学の先生の幅です。研究者、学者というのは、基本的に頑なです。立命館の川村教授というのは、非常に幅があった。だから言いたいことを言いました。「先生、私はこんなことがやりたい」と。先生が「それはちょっとむずかしいな」と言えば、「知識ないですな。もっと研究しておくんなはれや」と。川村教授は私のことを「この方は自分では何もわからないし、できないくせに人にはぼろかすに言う人です」と言っていますが、中小企業の社長はそれでいいんです。

■志を持ち大学の門を叩けば、夢を現実化できる


 夢をみたらよろしい。こういうことがしたいという時に、頭のいい人は頭を使ったらいい。頭の悪い人は人の力を借りたらいいんです。今の日本の工学は、私たちが考える程度のことだったら、夢のようなことだって簡単に解決してくれると思います。

 たとえば靴下業界は、今、中国の安い輸入商品がどんどん入ってきていて、奈良県等の工場がつぶれていっています。中国製品に負けるというのは人件費の問題だけなんです。今から10年ほど前に上海に工場をつくった時は、人件費は4800円余、今年で1万2600円です。そしたら中国人10人と日本人1人で戦えばいい。そして消費地が身近にあるんです。

 私は京都のある工場で10人から12、3人かかる作業工程を細かく説明し、機械化できないかという話をした。1年余でやってくれました。もっと精巧な機械をつくった。私らの言う程度のことだったら簡単なものです。志が大切なのです。

■大阪の商売人の誇りで飛び込む

 むずかしく考えるからいけない。ましてや大阪の商売人、事業家はもっと元気を出さなければいけない。数年前に日本がエコノミックアニマルといわれた時の、大阪の商人は世界の列強相手に戦っていた。大阪の商人というのはそれくらいの戦闘力がありました。大阪の商人が売れないと言うのは恥ずかしいことです。やる気があるかどうかの問題です。もうちょっと大阪の商人らしい誇りを持たないといけない。

 イギリスに店を出す時、英語が話せる社員を募集しました。その面接の時、「私は中学校の時に、英語の先生に教えてもらったボーイズビーアンビシャス。その確かな発音の仕方を教えてくれるか」と聞いたんです。そしたら小さな声で「''Boys be ambitious'' です」と言うので、私は「聞こえん」と何度も言わせた。最後は泣いて帰った。手紙が来ました。「社長の質問で私は採用されないということがよくわかりました」と。

 英語が話せるかどうかは属性の問題です。知識とか技術とかは属性の問題であって人間のやる気という本気が大切なんです。

■やる気があったら何でもできる

 もっと誇りを、闘志を持つべきです。われわれの人生は夢、ロマンです。夢も理想も何もない日常の中で、ただあたふたとお金を求めるようなことだけをしているからいけない。

 観音様は人間が困った時、数万の姿をして助けにくるといいます。ある時はお父さん、お母さんとか、ご兄弟とかお友達、いろんな姿に変身してくるといいます。考えてみればコンピュータだって、機械だってそうです。いろいろな会社がつくってくれる。それをわれわれがどう組み合わせるかだけの問題です。

 今の日本で私もそうですが、100億や200億の、潜水艦のような商売をしていたら、世の中の景気は全然関係ありません。せめて波の下から出ないことには世間の風はあたりません。ですから景気がいいとか悪いとか言うのがおかしい。やる気があったら何でもできます。もっと根本に戻って、迷路に入るのではなく、道は近くにあります。気がついていないだけです。もっと積極的に生きるべきだと思います。




(納税月報 2004年 2月号より)