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フォーラム納税協会60
第1部 分科会
成功事例から中小企業が抱える問題解決の核心に迫る
 
 納税協会連合会では、平成15年10月6日、NHK大阪ホールにおいて、「がんばれ関西・中小企業! 勝者の道を探ろう。」と題して、納税協会創立60周年記念「フォーラム納税協会60」を開催しました。
  第1部は、3つのテーマに分かれて分科会を開催。
  第2部はパネルディスカッションが行われました。(第2部の内容は、平成15年12月号に掲載)
  今号より3回にわたって、この第1部分科会の内容を紹介します。


テーマA グローバル戦略、その成否の分かれ目


事例発表1 「グローバルに貢献するという経営理念」
  三鈴製線株式会社 代表取締役社長 鈴木 雅也氏
   
   電線用導体の専業メーカーである同社は、地球市民意識をモットーに中国へ進出。現地人を雇用し、ジャイニーズ(鈴木氏がジャパニーズとチャイニーズを合わせて作った造語)企業として、ボーダレスなネットワークの構築に成功している。
   

 

 

■「地球市民意識」と「ジャイニーズカンパニー」

  1985年プラザ合意後の急激な円高の結果、ユーザーの要請で香港進出を余儀なくされ、1987年に会社設立以来15年間、今日まで続いているということで成功であるとすれば、その要因は何かということで、私の経験を踏まえながらお話します。

  第1番目は経営理念です。海外進出をする場合、この経営理念をしっかり持つことが重要です。香港進出当時、日本はちょうどバブルが始まる頃で経営者は不動産、株にこぞって投資、それで資産がどんどん増えるという状況の中、会社経営とは何か、目的、ビジョンは何か、私自身まとまらない状態でした。その時出合ったのが「地球市民意識」という言葉です。香港進出の推進力ともなり、また理論武装できる言葉であると同時に、経営者としての意思決定や行動の指針にその後、つながっていきました。

  香港進出後、2001年にはユーザーの上海移転に伴って私どもも上海に工場を進出しましたが、その時の意思決定は1週間ほどで、その速さに「まるで香港企業のようだ」と、香港の銀行家から評され、その時に頭に浮かんだのが「ジャイニーズ」というチャイニーズ、ジャパニーズからの造語です。最初は冗談で言っていたのですが、そのうち先の地球市民意識同様、私自身の意思決定や行動の指針になってきています。

  昨年、SARSで中国は大変な状況でした。日本人を帰国させるか、工場をどうするか、選択を迫られる状況の中、私は日本企業というよりジャイニーズ企業として、従業員一致団結して操業を続ける決断をしました。結果、むしろその時期、売上げを伸ばし、現地の信頼関係も深まり評価も高まりました。

  中国ビジネスの基本方針として「ジャイニーズカンパニーとして社員1人1人が地球市民意識を持って社会に貢献し日中の共存共栄の実現をめざす」と明確にうたっています。

  2番目はリスクテイクです。私自身のキーワードにしていますが、イメージで言えば「一歩踏み出してみて初めて見える景色がある」ということです。当時、中国進出で常識だったのは加工産業は人件費などでメリットはあるが、設備産業はメリットがないということです。まして国内では工場の無人化を進めており、コストは変わらないのではないかということを多くの方が言われました。私どもはスクラップ同然の設備を持ち込んだのですが、それが安い賃金によって全自動の無人機に大変身し、また24時間30日間フル活動することが可能になりました。実績として24時間360日稼動したことがあります。実際にアクションを取ってみて、初めて頭で考えてきたことと違う解答が得られたということです。

■ボーダレス化を推進しネットワークを構築する

  3番目はボーダレス。中国では昨年のWTO加盟前後から、大きな転換期を迎えています。1つは、従来の取引通貨の香港ドル、USドルから人民元取引の必要性が高まったということ。もう1つは台湾、韓国、香港だけでなく欧米企業の中国進出です。こうした状況の中、中国国内の販路拡大、あるいは国境を越えたアライアンスなどが勝ち残るためにはどうしても必要になります。そうしたときに企業ネットワーク、人的ネットワークが重要になり、改めて私どもも積極的な交流を図るための転換をしています。

  社内的にも、人的資源、企業体、マーケットの領域についてボーダレス化を図ることを掲げ推進しています。人的資源のボーダレス化ですが、従業員を含めた国籍、年齢、性別を超えた人事制度の構築があります。これは設立当初から先の経営理念に基づいてやっていることですが、日本人も中国人も関係なく、この仕事ができるからこの給料をもらっているということを自覚してくださいと常に言っております。それから企業体としてのボーダレス化ですが、この合弁アライアンスについては一度失敗しています。中国ビジネス自体がスピードを要求されており、自力だけではどうしてもむずかしい状況がありますので、失敗を教訓にしながら台湾系、香港系を含めた日系以外の他の国の企業とのアライアンスも進めていきたいと思っています。また3つ目のマーケットのボーダレスはもともと日本からでも輸出している企業も多く、今さらながらという感ですが、どうしても日系ユーザー優先という気持ちが残っており、あえてボーダレス化に加えています。

  以上が成功の要因ではないかと考えていますが、やはり最初にグローバルに貢献するという経営理念があるからこそ、ボーダレスな企業ネットワーク、人的ネットワークが構築でき、そのネットワークがあるからこそ信頼してリスクが取れたということからすると、やはり進出の際の理念が最も重要かと思います。

  最後に中国進出に関して、もはや中国オペレーションを持っていることは必要条件ではあるが、十分条件ではないということ、むしろ事業自体の競争力が重要だということです。



事例発表2 「長期の事業計画を立て、目標を見極めた展開をする」
  株式会社テイク 代表取締役 飯尾 義方氏
   
   地球市場を視野に、集荷・再生修理・資源リサイクル・販売までをIT導入で一括管理。中国・大連の協力工場で分解・修理・出荷を行い、東アジア諸国でリサイクル事業を展開している。
   

 

 

■進出の目的を明快に

  私どもの会社はクリーン、グローバルをモットーに、国内の使用済み家電製品、OA機器、産業機械を輸出し、海外で再生して販売しています。家電、OA機器のリサイクル法、そして来年には自動車のリサイクル法が施行されますが、これらは国内では消費者の費用負担の上に成り立っています。かといって処理業者も決して儲かっているわけではありません。そこで海外で事業展開をすれば消費者、事業者ともにいいのではないかということで、国内で集めた商品をほとんど経費をかけずに全部海外へ持ち込み、修理、あるいは部品取りして他はスクラップにするなど分別します。海外へ送るためにはバーゼル法とか国際法など、いろいろクリアしなければならない問題も多くあります。

  グローバル展開というのはおもしろいのですが、非常にリスクも大きく問題もたくさんあります。基本的な問題では、まず大企業と中小企業ではグローバル展開といってもまったく違います。これを履き違えると、大変な間違いが起きかねません。もう1つ、海外進出にあたって何が大切かというと、進出の目的が明快であるということです。しっかり目標を見極めた展開をしていると、必ず先が見えてきます。

■どんなリスクがあるのか知っておく

  リスクについては政治的、経済的、社会的リスクといろいろありますが、全部クリアすることは到底無理で、こういうこともあるということを念頭においてほしいと思います。

  まず政治的リスクですが、中国、シンガポール、タイ、ベトナムといろいろな国で事業展開してきましたが、各国とも政治的リスクはあります。たとえば中国では北京政府と各省で法律の運用が違い、上海と大連での解釈がまったく異なるというのも珍しくありません。また、バンコク周辺には大きなコンテナを揚げる港が3つありますが、ここの港で揚げたら40%、向こうだと17%と、関税が違う。日本では考えられないことがあります。

  次に経済的リスクですが、一部政治的リスクにも関わってきます。たとえば中国での許認可制度。中国で会社や支店をつくるという時、登記はすぐにでき一見簡単そうですが、実際に営業をする段になると、何で警察に、何でこんな部署に書類を出す必要があるのかというくらい大変です。もう1つ、売掛金の回収が日本と違って並大抵ではありません。また、中国の場合、通貨・元の切上げが迫ってきています。この辺の見極めも必要でしょう。
  次の社会的リスクというのは大変悩ましい問題で、文化、歴史の違いをも含んでおり、特に最近思うのは愛国心です。タイ、フィリピン、シンガポール、どこの国も非常に愛国心が強く、注意をしておかないと、ちょっとした言葉の行き違いで大変なことになります。

  それから習慣の違いがあります。中国でコンテナに荷を積む時に中国の人の立会いがあるのですが、昼になって、その方に従業員と同じように弁当とペットボトルのお茶を出した。ところが全然手をつけない。なぜかというと中国では朝・昼・晩と温かいものを食べます。冷たいものは粗末なものと感じているんです。そんなことで激論になりましたが、習慣の違いというのは大変怖いと思いました。

  経営的なリスクですが、大企業等ではリスクマネージメントのセクションを設けて対応しています。しかしリスクマネージメントは新規事業の場合は事業の積極的な芽を摘んでしまうことにもなり、ある程度で止めておいたほうがいい。その代わり進出が決まったら徹底的にする。ですからリスクマネージメントは後追いでもいいと思います。

■情報は自分の頭と足を使って集める

  大切なことは事業計画です。事業計画も中長期と立てますが、特に重要なのは長期の事業計画です。その上で短期事業計画を立てます。事業を始めたら足元から次々に変更を余儀なくされますから、足元をきっちり固めておくことが必要なのです。

  事業計画を立てる際に不可欠なのが情報です。今は情報が溢れています。財務省、ジェトロ、インターネットと、積極的に取ろうとすれば情報はどんどん入ってきます。しかしこれらの情報はほとんどが大企業、あるいはそれに近い企業を中心に考えられています。結局、自分の頭と足を使って集めないといい情報は得られません。
  またIT化というのは絶対必要です。それと人脈です。中国ではコネがあるのとないのとでは雲泥の差があります。人脈を如何に育てていくか、日頃の精進がこの辺に現れます。

  最後に、海外へ進出するのにどこに相談に行けばいいかというと、やはり当事国の領事館の商事部、商工部、あるいはジェトロ(日本貿易振興会)、また中国であれば日中経済貿易センター等々ありますが、最後に決断を下すのは経営者自身です。




(納税月報 2004年 1月号より)