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新着情報

「着任インタビュー」を掲載しました。

2021.10.14

大阪国税局長 吉井 浩
【吉井 浩(よしいひろし)氏の略歴】
和40年生まれ 東京都出身
昭和63年 大蔵省入省
平成5年 足利税務署長
平成24年 財務省主税局税制第一課主税企画官
平成24年 財務省主計局主計官(防衛)
平成25年 復興庁参事官
平成27年 国税庁長官官房企画課長
平成28年 国税庁長官官房総務課長

平成30年 国税庁長官官房審議官

令和元年 福岡国税局長

令和2年 名古屋国税局長

令和3年 現職

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大阪国税局長 吉井 浩
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【聞き手】
公益財団法人納税協会連合会
常任副会長
新木 敏克
〔令和3年8月4日収録〕


◎不断の努力で適正・公平な税務行政の推進に取り組む
新木 ご着任おめでとうございます。最初に、大阪国税局長にご着任されての抱負をお聞かせください。

吉井 まず、新型コロナウイルス感染症による影響を受けられた皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 私は、昭和63年に旧大蔵省に入省し、これまで様々な分野で幅広く仕事を経験してまいりました。税務行政に携わりますのは、財務省主税局での勤務と国税組織におきましては、平成5年の関東信越国税局足利税務署長と平成27年から4年間を国税庁で勤務し、国税局長としては令和元年の福岡国税局長と昨年の名古屋国税局長に続き3度目であります。
 その中でも、大阪国税局は全国の国税局の中で東京国税局に次ぐ職員を抱え、国税組織の中核を成す非常に伝統のある組織であります。
 その関西の税務行政を担っていく機会を得ましたことを大変光栄に思うと同時に、職責の重さに身の引き締まる思いであります。
 経済取引のグローバル化・ICT化の進展に加え、新型コロナウイルス感染症を契機として社会全体のデジタル・トランスフォーメーションの進展、働き方の多様化など、税務行政を取り巻く環境は大きく変化し、新たな課題も抱えております。
 そのような状況においても、国税庁の使命である「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことを果たしていくため、不断の努力で「納税者サービスの充実」と「適正・公平な課税・徴収」に取り組んでいきたいと考えております。
 特に、「納税者サービスの充実」という観点からは、これまで、新型コロナウイルス感染症の対応として、申告・納付期限の延長や納税の猶予の特例などの手続について、様々な機会を通じた周知・広報や納税者のご相談に適切に取り組んでまいりました。
 今後も引き続き、国税庁・国税局の対応や取組について、ホームページ等を通じて、幅広く周知・広報を行っていくほか、納税者の皆様方が多く来署する所得税等の確定申告期間を含め、納税者の方々が不安に思うことなく、申告・納税手続等を行っていただけるよう、感染拡大防止に努めるとともに、納税者の皆様の実情に十分に耳を傾けて、迅速かつ丁寧な対応に取り組んでいくことが重要と考えております。
 また、適正な申告・納税を行った納税者が不公平感を抱くことのないよう、悪質な納税者に対しては組織的に厳正な姿勢で臨むなど、適正・公平な課税・徴収に努めるとともに、税務行政に対する納税者の皆様の理解と信頼が得られるよう、税の意義・必要性及び税務行政の取組についての広報や申告・納税に必要な情報提供、e─TaxなどICTを活用した利便性の高い申告・納税手段の充実に取り組んでまいります。
 国民の皆様から負託を受け、信頼できる税務行政を行っていくためには、納税者の皆様方との信頼関係を築くことが重要であると考えていますが、私どものみの力では到底成し得ないことから、納税協会の皆様方のご理解とご協力を賜りたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


新木 こちらこそよろしくお願いいたします。


◎今後の関西経済の活性化に期待

新木 関西について、どのような印象をお持ちですか。
吉井 関西は、古くから都が置かれるなど日本の中心として栄えてきた歴史を持つほか、日本を代表する文化・芸能が生まれるなど、歴史と文化が非常に豊かな地域であり、世界文化遺産をはじめとして、国宝・重要文化財を数多く有する文化財の宝庫です。

 また、古くから日本酒の醸造が盛んであり、灘、伏見といった全国有数の酒どころがあるほか、山田錦をはじめとする酒造米の一大生産地もあります。
 一方で、数多くの高層ビルが立ち並び、現在も大型の複合再開発が相次いで行われており、深い歴史と近代的な街並みが融合した、大変魅力的な地域であると感じております。
 今回、初めて大阪勤務となったことを良い機会としまして、関西の文化や歴史に直接触れてみたいと思っております。


新木 関西経済についてのご感想やご期待などをお聞かせください。

吉井 電気機器、製薬、保険など我が国をリードする企業が数多くあるほか、地域の特色を生かした産業も数多く、活気にあふれた地域と感じております。

 しかしながら、現下の新型コロナウイルス感染症の影響により、社会経済活動が停滞し、インバウンド消費も極めて低い水準が続いているなど、関西経済も同様に影響を受けています。
 令和4年5月にワールドマスターズゲームズ、令和7年4月から10月にかけて大阪・関西万博の開催が予定されており、関西経済への波及効果が見込まれるビッグイベントなど明るい材料もありますので、関西経済の活性化に期待したいと思います。

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◎我が国の財政について

新木 我が国の財政について、現状を簡単にご説明いただくとともに、今後の展望をお聞かせください。
吉井 令和3年度の国の予算は、新型コロナウイルスの感染拡大防止に万全を期しつつ、デジタル社会やグリーン社会の構築など、中長期的課題にも対応するものとなっており、一般会計歳出総額は、106兆6097億円となっております。

 また、令和3年度予算の税収につきましては、57兆4480億円を見込んでおります。
 令和3年度予算の公債金収入(歳出と税収等との差額)は、43兆5970億円となり、公債依存度が前年度当初予算の31・7%から40・9%に上昇することになります。
 このような状況の中、少子高齢化に伴い、年金や医療、介護などの社会保障費用は増加し、令和3年度予算では、35兆8421億円にも上っており、社会保障制度の持続可能性を確保するため、「社会保障と税の一体改革」により、社会保障制度の充実を図りながら、将来世代への負担の先送りの軽減を実現していく必要があります。
 いずれにしましても、歳入・歳出両面での財政健全化への取組を緩めることなく着実に実施していくことが求められるものと考えます。


◎あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指す

新木 次に、税務行政の当面の課題と運営方針をお聞かせください。
吉井  国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことであり、納税者の皆様がよりスムーズ・スピーディに申告や納税の手続を行っていただけるよう、納税者サービスの充実に向けた施策を実施し、納税環境の整備に取り組んでいきたいと考えています。

 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、税の納付が困難な方に対しては、納税猶予制度をご案内するなど、今後も納税者の皆様に寄り添った対応を行っていきたいと考えております。
 一方、中長期的には、税務行政を取り巻く環境が大きく変化する中、国税庁の使命を果たすため、我々の組織も世の中の変化に応じて変わっていかなければなりません。
 こうした観点から、平成29年6月に国税庁において、中長期的に目指すべき将来像を明らかにし、その実現に向けて着実に取り組んでいくことが重要との考えの下、「税務行政の将来像」が公表され、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」を2本柱として、スマート税務行政を目指すこととしております。
 本年6月には、経済社会の変化やデジタル技術の急速な進展を踏まえ、目指すべき将来像の内容をアップデートした「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション─税務行政の将来像2・0─」を公表し、デジタルを活用して国税に関する手続や業務を抜本的に見直し、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指す方針を示しました。
 納税者の利便性の向上に向けた具体的な取組としましては、e─TaxなどICTを活用した申告・納税等の税務手続について、サービスの充実に努めるほか、令和5年10月から導入されるインボイス制度の円滑な導入に向けて、事業者の皆様に制度の理解を深めていただいた上で、それぞれの事業の実態に応じた対応や準備を進めていただけるよう周知・広報に取り組んでいるところです。
 また、適正・公平な課税・徴収の実現への取組の面では、情報の一元化を図りながら、データを積極的に活用できるシステム及び組織作りを進め、課税・徴収事務を効率化・高度化するとともに、税務署の内部事務の集中処理などを通じた業務改革を進め、こうした取組により創出したマンパワーを活用し、重点課題である「国際的租税回避への対応」、「富裕層に対する適正課税の確保」及び「大口・悪質事案への対応」に的確に取り組んでいくこととしております。
 さらに、酒類業の所管官庁として、「酒類業の健全な発達」を図るため、関係省庁・機関等と連携して、地理的表示(GI)制度などを活用した酒類のブランド化や日本産酒類の国内外における認知度向上、海外における販路開拓支援や輸出環境整備に積極的に取り組むなど、国内向け施策と輸出促進施策を両輪に、酒類業振興の強化に取り組んでまいります。
 その一方で、酒類業界は、相次ぐ緊急事態宣言に伴う飲食店への休業要請や酒類の販売自粛要請により、甚大な影響を受けておりますので、国税庁としましても、アフターコロナを見据えた酒類業者の経営改革等を支援するため、補助金制度を拡充するなど、酒類業界に寄り添った取組を実施していくこととしておりま


◎魅力ある事業を展開し、企業経営や地域社会への貢献を期待

新木 納税協会は、税に関する公益法人として、租税教室の開催などに積極的に取り組むほか、次代を担う青年部会の活性化に力を注いでいます。

今年は、新型コロナウイルス感染拡大防止に配慮しつつ、インボイス制度の周知・広報にも取り組んでいます。納税協会へのご注文、ご期待などがありましたら、お聞かせください。

吉井  納税協会は、個人・法人を問わず、加入することができる全国に例のない組織として、税知識の普及、適正な申告納税の推進及び納税道義の高揚を図るという目的のため日々ご尽力いただいており、私どもにとりましても大変心強い存在となっております。

 また、納税協会の部会の中でも、次代を担う青年部会は、積極的に事業活動を行っていただいており、組織の活性化に取り組んでおられると聞いております。
 青年部会の共通の活動テーマとして力を入れて取り組んでおられる租税教育活動については、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年度の租税教室の開催回数は大幅に減少(対前年比27・9%)したにもかかわらず、納税協会の皆様から延べ388名(対前年比40・5%)もの講師を派遣していただくなど、租税教育の充実に貢献しておられます。
 さらに、インボイス制度の円滑な導入に向け、納税協会主催による説明会の開催など周知・広報に積極的に取り組んでいただいており感謝申し上げます。
 現在、新型コロナウイルス感染症の影響により様々な活動が延期や中止となるなど制約された状況の中ではありますが、こういう時だからこそできることは何かなどについて、納税協会の皆様と意見交換を活発に行い、コロナ禍における新しい取組を実施しているところであります。
 このようにコロナ禍において取り組んだ有効な事例につきましては、パンフレットを作成するとともに国税庁ホームページに掲載し、活動状況を広く共有していきたいと考えております。
 今後とも、納税協会の皆様とは様々な事業活動を通じ、税務行政の良き理解者、良きパートナーとして、これまで以上により良い連携・協調関係を築いていきたいと考えております。 
 今後も魅力ある事業を活発に展開され、地域社会での納税協会の存在意義を高めるとともに、より一層、企業経営及び地域社会の発展に貢献されますことを期待しております。
 引き続きご理解とお力添えをよろしくお願いいたします。

新木 こちらこそ、よろしくお願いいたします。


◎税務行政の執行には納税者の信頼確保が不可欠

新木 仕事におけるモットー、座右の銘などについてお聞かせください。

吉井 納税者との関係においては、納税者の信頼を確保していくことが大切だと思っております。

 納税者には利便性の高いサービスを提供しながら、悪質な納税者に対しては厳正な対応をしていくことで税務行政に対する信頼を培っていくことが大事だと思っております。
 一方で、職員に対しては、職務の重要性と公共性をしっかりと自覚し、納税者の信頼を損なうことのないように行動してほしいと思っております。

新木 それでは、最後に、余暇の過ごし方、趣味などについてお聞かせください。
吉井 食べ歩きが趣味です。ただコロナ禍なので、自宅において、食文化の多彩な関西の美味しい食べ物を味わっていきたいと考えております。

 また、気分転換に自転車に乗ることも好きなことから、先ほども申し上げましたが、関西は歴史的な建造物や文化遺産を数多く有していますので、休日等を利用して、できる限り様々な地域に足を伸ばしてみたいと考えております。

新木 お体にお気を付けていただきまして、ご活躍されますことを、納税協会の会員の皆様とともに祈っております。

本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。


(納税月報 2021年11月号より)

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