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講演 平成29年度税制改正について

2017.04.10

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田原芳幸

(財務省主税局税制第三課長)

(敬称略)



本稿は、去る1月30日の税制改正講演会における講演内容を要約したものです。

Ⅰ 経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革

1 配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

  田原でございます。本日は、平成29年度税制改正についてご説明させていただきます。

 誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」を実現するためには、「働き方改革」を進めることが重要であり、多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換することが求められています。こうした中で、働きたい人が存分に活躍できる社会の実現や人手不足解消の観点から、就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するため、経済社会の構造変化を踏まえた個人所得税改革の第一弾として、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行います。

 配偶者控除は、例えば、夫が主な稼ぎ手で、妻がパートで働いているようなケースを想定すると、妻の収入が103万円までの場合、夫は38万円の所得控除を受けられます。現行制度においては、妻の収入が103万円から増えるにしたがって、夫の受けられる所得控除額が逓減していく仕組みとなっており、これを配偶者特別控除といいます。

 今回の改正では、所得控除額38万円の対象となる配偶者の収入の上限を103万円から150万円に引き上げます。また、150万円からはなだらかに控除額を減らし、配偶者の収入が201万円まで控除を受けられる仕組みとします。この150万円という金額は、安倍内閣が目指している最低賃金1000円で、1日6時間、週5日働いた場合の年収を上回る水準となります。

 さらに、新たな仕組みとして、この控除額を納税者本人の所得に応じて逓減・消失させていく仕組みを設けます。納税者本人の収入が1120万円までは、控除額を満額受けられますが、1120万円を超えて1170万円までの間は、受けられる控除額を3分の2に、1170万円を超えて1220万円までの間は3分の1に減らします。納税者本人の収入が1220万円を超えると、配偶者の収入にかかわらず、控除が受けられなくなります。

 控除の対象者を広げることで、1500億円の減収となりますが、納税者本人の所得制限を設けることで1500億円の増収となります。この2つを合わせて、税収中立の形で配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行います。

 この改正を行う背景ですが、パートをされている収入103万円付近の方が就業調整をして、例えば、年末近くになるとパートに出る回数や時間を減らし、103万円を超えないようにしているという指摘があります。昭和61年以前は、配偶者の収入が103万円(昭和61年当時は90万円)を超えると、配偶者控除が受けられなくなり、世帯の手取りが逆転していました。これが俗にいう「103万円の壁」といわれていたものですが、配偶者特別控除を導入したことで、配偶者の収入が103万円を超えても世帯の手取りが逆転しない仕組みとなっており、税制面では103万円の壁は解消しています。しかし、この103万円という金額は、企業の配偶者手当の支給基準とリンクさせている場合が多く、心理的な壁として作用しているといわれています。

 民間における家族手当の支給状況を見ると、何らかの家族手当制度のある企業が約8割で、そのうち配偶者に家族手当を支給する企業が9割弱、また、その手当てを配偶者の収入によって制限している企業の7割弱が、その額を103万円としています。

 今回の改正を受けて、企業の家族手当制度等において、配偶者の収入制限の額が103万円のままですと、103万円の壁が残ってしまいかねないと考えていますので、企業の皆様に対しまして、この103万円のラインを何らかの形で見直していただきたいと思います。

 配偶者控除は、一定の収入以下の扶養親族を有する場合における納税者の担税力の減殺を調整する仕組みの一つであり、諸外国でも配偶者の存在を考慮した仕組みが設けられていることも踏まえれば、廃止してしまうというのは問題であると考えられます。一方で、全ての夫婦世帯を対象とする新たな控除は、高所得者の夫婦世帯にまで配慮を行うこととなり、多額の財源を必要とする問題もあるため、このような見直しを行うこととしました。今後も引き続き、個人所得課税改革に取り組んでいきます。

2 所得控除方式の見直し
日本における基礎控除をはじめとする人的控除等については、「所得控除方式」を採用していますが、これは高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいことから、諸外国における負担調整の仕組みも参考にしつつ、来年度の税制改正において控除方式のあり方について検討を進めていきます。例えば、諸外国の例を見れば、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」のほか、現行の「所得控除方式」を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入が考えられます。

3 働き方の多様化を踏まえた諸控除の見直し
 雇用の流動化や労働者に近い形態で働く自営業主の割合の増加などにより、働き方が多様化しています。例えば、自営業主を職種別で見ると、建築技術者やSE、保険代理人・外交員など使用従属性の高い自営業主が多く含まれる「雇用的自営等」といわれる職種の割合が増えています。

 日本の所得税の構造は、給与所得控除や公的年金等控除といった、所得の種類ごとの負担調整の割合が大きく、配偶者控除や基礎控除といった家族構成や所得水準などの納税者の人的な事情に配慮した負担調整が小さいという特徴がありますが、より人的な事情に配慮を行いつつ、ライフスタイルに合わせた多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要であると考えます。こうした観点から、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と基礎控除などの「人的控除」のあり方を全体として見直すことを検討していきます。


4 老後の生活に備えるための自助努力を支援する公平な制度の構築
 老後の生活に備えるための自助努力を支援するための私的年金・金融所得等に係る税制の見直しを行います。具体的には、老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援するものとして、企業年金等がありますが、非正規雇用労働者や自営業主、専業主婦と比べると、正規雇用労働者の方が手厚い税制上の措置が用意されています。社会保障制度を補完する観点や働き方の違い等によって有利・不利が生じないようにするなど公平な制度を構築する観点から、幅広い検討を行っていきます。

 デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置

1 研究開発税制の見直し

 研究開発税制について抜本的な見直しを行います。

 1つ目は、「総額型」の税額控除率の見直しです。官民の研究開発投資を平成32年に対GDP比4%以上とする政策目標の着実な達成のため、企業の研究開発投資の一定割合を単純に減税する形となっている構造を見直し、試験研究費の増減に応じた税額控除率とすることで、増加インセンティブを強化します。

 2つ目は、試験研究費へのサービス開発の追加です。研究開発税制の支援対象に、これまでの製造業による「モノ作り」の研究開発に加え、ビッグデータ等を活用した「第4次産業革命型」のサービス開発を新たに追加します。

 3つ目は、オープンイノベーション型の運用改善です。オープンイノベーション型については、高い控除率を設定しているにもかかわらず、手続面の負担等を背景に、あまり利用されていませんでした。そこで、対象費目の拡大や対象費用の追加・変更の柔軟化、事業年度終了時における特別試験研究費の額であることの確認方法の簡素化を行うことで、オープンイノベーションの更なる促進を図ります。

 また、高水準型については、適用期限を2年延長します。

2 所得拡大促進税制の見直し

所得拡大促進税制は、大企業と中小企業で制度が分かれています。

 大企業については、平均給与等支給額が前事業年度を上回るという要件を、前年度比2%以上増加させるという要件に変更し、給与等支給総額の平成24年度からの増加額に対する10%の税額控除に加え、前年度からの増加額について、2%の税額控除を上乗せします。

 中小企業については、要件に変更はありませんが、給与等支給総額の平成24年度からの増加額に対する10%の税額控除に加え、平均給与等支給額が前年度比2%以上増加した場合は、給与等支給総額の前年度からの増加額について、12%の税額控除を上乗せします。

3 法人税の申告期限の見直し

企業と投資家の対話の充実を図るため、株主総会の開催日の分散等が課題となっています。現行では、原則、事業年度終了日後2か月以内に申告書を提出することとなっており、特例によって申告期限を事業年度終了後3か月まで延長が可能でした。これを、今回の改正では、会計監査人を置いている法人で、定款等の定めにより事業年度終了後3か月以内に定時株主総会が招集されない場合には、申告期限を事業年度終了後最大6か月まで延長できるようにします。


4 役員給与等に係る税制の整備

「攻めの経営」を促す観点から、経営者に中長期インセンティブを付与するため、利益連動給与について、複数年度の利益に連動したものや、株価に連動したものも損金算入の対象とするなどの見直しを行います。

5 組織再編成税制等の見直し

 企業の機動的な事業再編を可能とするため、特定事業を切り出して独立会社とする「スピンオフ」を行う際に、一定の要件のもとで、譲渡損益や配当に係る課税を行わないこととします。

Ⅲローカルアベノミクスの推進(中堅・中小企業者の支援、地方創生の推進)

1 地域未来投資促進税制の創設

 地域経済を牽引する地域中核企業による、地域経済に波及効果があり、高い先進性を有する新たな事業への挑戦を促すための投資促進税制を創設します。都道府県の認定と国の確認を受け、高い先進性を有すると認められた企業に対して、特別償却や税額控除という形で設備投資を支援します。

2 中小企業投資促進税制等の拡充等

 中小企業の「攻めの投資」を後押しするとともに、日本のGDPの約7割を占めるサービス業の生産性の向上を図るため、中小企業投資促進税制の上乗せ措置を改組し、中小企業経営強化税制を創設した上で、対象設備を拡充し、これまでの上乗せ措置において対象外であった陳列棚や冷蔵庫などの器具備品・建物附属設備を追加します。また、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の適用期限を2年延長します。

3 中小企業向けの租特適用要件の見直し

 平成22年10月26日の会計検査院の財務大臣・経済産業大臣に対する意見表示では、多額の所得を得ていて財務状況が脆弱とは認められない中小企業者が、中小企業者に適用される特別措置の適用を受けている事態が見受けられたとあります。そこで、今回、財務基盤の弱い中小企業者を支援するという本来の趣旨を踏まえ、中小企業向け租税特別措置の適用を受けるための要件として、過去3年間の課税所得の平均が15億円以下であることを加えます。この15億円というのは、大企業における利益法人の10年の平均所得です。つまり、大企業並みの平均所得を得ているような中小企業については、資本金が1億円以下であったとしても、租税特別措置法の優遇措置の対象外になるということです。ただし、企業経営に大きな影響を与えることから、平成29年4月からの適用ではなく、平成31年4月からの適用とします。また、この対象となる措置は、租税特別措置法における中小企業向けの優遇措置のみで、法人税法に規定される欠損金の繰越控除などは、今までどおり中小企業として取り扱います。

4 事業承継税制の見直し

 事業承継税制を見直し、安心して制度が利用できるように要件の緩和等を行います。具体的には、セーフティネット規定を創設し、災害等で雇用の8割維持要件を満たせなくなった場合でも、引き続き猶予を継続できるようにします。また、従業員の少ない小規模事業者に対する配慮として、雇用確保要件の計算方法について、維持すべき従業員数の計算上、端数を切り上げていたものを切り捨てに変更します。その他、早期の計画的な事業の承継を支援するための生前贈与の促進や、より使い勝手のよい制度とするための手続の簡素化も行います。

5 地方拠点強化税制の拡充

 ローカルアベノミクスを推進する観点から、地方拠点強化税制の投資減税部分の控除率を維持するとともに、地方拠点での新規雇用者数に応じた税額控除制度について、無期・フルタイムの新規雇用に対する税額控除額を上乗せします。

6 到着時免税店の導入

 旅客がその入国の際に携帯して輸入する個人使用目的の物品において、関税及び内国消費税が一定の範囲内で免除される携帯品免税制度について、旅客の利便性の向上等の観点から、全国各地の空港等の到着エリアにおける免税店、いわゆる到着時免税店の導入を可能とし、到着時免税店で購入した物品を、現行制度の対象に追加します。

7 酒税改革について

 類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料や醸造酒類の税率格差の解消、ビールの定義拡大などを行います。この酒税改革により、酒類製造者が消費者にとって真に魅力ある商品の開発に経営資源をシフトすることや、地域の特色を活かした魅力ある商品の開発が進み、地方創生の牽引役となることが期待されます。さらに、国際的にも評価される商品の開発が進み、日本産酒類のブランド価値の向上や、日本の酒類産業の国際競争力の強化にもつながると考えられます。

 まず、税率構造の見直しです。ビール系飲料には、ビール、発泡酒、新ジャンルと3種類あり、それぞれ税率が異なります。現行の税率を350ml換算すると、ビールは1缶77円、発泡酒は46・99円、新ジャンルは28円となっていますが、平成38年10月に、3段階の調整を経て、54・25円に一本化します。なお、税率の段階的な見直しについては、その都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等も勘案して検討を加え、必要に応じて所要の措置を講じます。

 次にビールの定義の拡大です。現行の「ビール」と表示して販売できる商品の範囲は、麦芽比率が67%以上とされ、麦芽、ホップ及び水以外に使用できる副原料は、麦、米、とうもろこし等に限定されています。一方、最近の地ビールブームで、地域の特産品などを加えて、独特の風味を出しているものを開発するところが増えています。しかし、現行の制度では、法律で定められた副原料以外のものを使った場合は、ビールとして販売することができず、商品表示上は発泡酒として販売することが求められます。そこで、地域の特産品を用いた地ビールの開発を後押しする観点や、外国産ビールの実態を踏まえ、平成30年4月に、麦芽比率50%以上の商品や、副原料として果実や一定の香味料を少量用いている商品を、ビールの定義に追加します。

 その他、「酒蔵ツーリズム」の魅力を高めていくため、酒類製造者が輸出酒類販売場(仮称)の許可を受けた製造場において外国人旅行者等向けに販売した酒類について、酒税を免税とする制度を導入します。

Ⅳ経済活動の国際化・ICT化への対応と租税回避の効果的な抑制

 外国子会社合算税制の見直しを行います。「外国子会社合算税制」とは、外国子会社を利用した租税回避を抑制するために、一定の条件に該当する外国子会社の所得を、日本の親会社の所得とみなして合算し、日本で課税する制度です。現行制度では、外国子会社の税負担水準が20%(トリガー税率)以上であれば、経済実体を伴わない所得であっても合算されず、申告も求められない一方で、実体ある事業から得た所得であっても合算されてしまう場合があるという問題がありました。そこで、租税回避リスクを外国子会社の外形で把握するのではなく、外国子会社の個々の活動内容により把握するようにします。また、租税回避リスクの低い外国子会社に、能動的所得と受動的所得に分類する事務作業が発生しないよう、一定の税負担をしている外国子会社に対しては適用を免除します。

Ⅴその他

1 車体課税の見直し

 燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、エコカー減税の対象範囲を見直します。現在、年間の乗用車の新車販売台数における減税対象が9割になっているところ、7割が減税対象となるように対象車を限定します。ただし、ガソリン車への配慮として、時限的・特例的な措置を講ずるとともに、段階的に基準を引き上げていきます。

2 災害関連税制の常設化

 近年、災害が頻発していることを踏まえ、災害減免法等の規定に加え、より機動的な対応が可能となるように、これまで災害ごとに特別立法で手当てしてきた対応を常設化し、災害対応の税制基盤を整備します。

 以上、平成29年度税制改正について、主なところをご説明させていただきました。

 今後の財政運営の目標としては、政府は、平成32年度にプライマリーバランスを黒字化することを挙げています。他方で、「中長期の経済財政に関する試算」によると、デフレ脱却・経済再生に向けた経済財政政策の効果が着実に発現した場合にも平成32年度のプライマリーバランスは、マイナス8・3兆円となっており、これを埋めていくために、「経済・財政再生計画」の枠組みの下、経済再生を進めるとともに、徹底的な重点化・効率化など歳出改革の取組を強化していくことになると思います。また、トランプ新政権となり、アメリカの法人税改革等についても、今後の動向に注意していく必要があると考えています。

 ご説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。




(納税月報 2017年4月号より)

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