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講演 平成28年度税制改正について

2016.04.11

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井上裕之
(財務省大臣官房審議官)
(敬称略)


本稿は、去る1月27日の税制改正講演会における講演内容を要約したものです。
Ⅰ 成長志向の法人税改革

1 法人実効税率20%台の実現

 井上でございます。本日は、平成28年度税制改正についてご説明させていただきます。
 まず、平成28年度税制改正には大きな柱が2つあります。1つは、成長志向の法人税改革です。これは、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという考え方の下、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し、「稼ぐ力」のある企業等の税負担を軽減することにより、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すものです。
 平成27年度の国・地方の法人実効税率は32・11%でしたが、平成28年度には29・97%、平成30年度には29・74%とし、目標の20%台を実現します。この引下げに当たっては、制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保します。
 各国の法人実効税率を見ていくと、アメリカは40・75%と高い数値ですが、ヨーロッパの国々は順次法人実効税率を引き下げており、日本と同じように財源を確保しながら法人税改革を行っています。平成27年にはイギリスも、法人実効税率の引下げを行いました。日本の29・97%や29・74%は、ドイツ(29・72%)と近い数値であり、まずはドイツの水準を目指すという意図がありました。
 それでは、制度改正を通じた課税ベースの拡大等についてご説明します。

2 課税ベースの拡大等
(1) 租税特別措置の見直し
 租税特別措置の見直しの中でも特に大きいものは、生産性向上設備投資促進税制の見直しです。この制度は平成28年度に縮減し、平成29年度に廃止します。その他、環境関連投資促進税制や雇用促進税制の見直しなども行います。租税特別措置について、期限が到来するものに関しては、原則廃止という前提で、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で見直しを行います。
(2) 減価償却の見直し
 現行の減価償却方法では、定率法と定額法を選択できるようになっている部分が多々ありますが、建物附属設備や構築物については定額法に一本化します。定率法は、元の金額が高ければ高いほど、最初の損金算入割合が高くなりますので、これを定額法に一本化することによって、最初の損金算入割合を小さくして、財源に反映させます。
(3) 法人事業税の外形標準課税の更なる拡大
 平成27年度の法人事業税は所得割が6%、資本割が0・3%、付加価値割が0・72%でしたが、この資本割や付加価値割の部分を大きくしていき、その分所得割、つまり企業の黒字部分に対してかかる税率を軽減します。平成27年度税制改正では、平成28年度の所得割を4・8%、資本割0・4%、付加価値割0・96%としていましたが、平成28年度税制改正で外形標準課税を更に拡大し、この所得割を3・6%に下げる分、資本割を0・5%、付加価値割を1・2%とします。
 また、付加価値額40億円未満の企業には特例が設けられ、付加価値額30億円以下の企業は平成27年度の税率より、税制改正後の平成28年度の税率の方が負担増になる場合、平成28年度は負担増分の4分の3、平成29年度はその4分の2、平成30年度はその4分の1を軽減する措置が講じられています。付加価値額30億円超40億円未満の企業は、この軽減率が縮小されます。
(4) 欠損金繰越控除の更なる見直し
 法人事業税の外形標準課税の更なる拡大など、法人税改革を加速化した状況を踏まえ、改革に伴う企業経営への影響を平準化する観点から欠損金繰越控除の更なる見直しを行います。大法人で、過去に生じた欠損金について所得金額の80%を控除限度額としていたところ、これを順次引き下げていくこととします。平成28年度は、平成27年度税制改正で決まっていた65%よりも控除割合を下げて60%に、反対に平成29年度は50%に下げるとしていたところを55%に引き上げます。最終的に、平成30年度は50%に引き下げることで変更はありません。
 続いて、平成28年度税制改正の2つ目の大きい柱である、消費税の軽減税率制度についてご説明します。


Ⅱ 消費税の軽減税率制度の導入

1 消費税の軽減税率制度の議論の経緯と導入の考え方

 社会保障と税の一体改革を実現するため、消費税率10%への引上げを平成29年4月に着実に実施します。これにより、社会保障を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、財政健全化を進めて市場や国際社会からの国の信認を確保します。
 他方、社会保障と税の一体改革の枠組みの下、税制抜本改革法第7条においては、低所得者に配慮する観点から、総合合算制度、給付付き税額控除制度及び複数税率について検討することとされています。このため、与党において議論を積み重ね、その結果、これらのうち軽減税率制度には、他の施策と異なり、日々の生活において幅広い消費者が消費・利活用しているものに係る消費税負担を軽減するとともに、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があることから、消費税率が10%に引き上げられる平成29年4月に軽減税率制度を導入することにしたというのが軽減税率制度導入の考え方です。
 同時に、軽減税率制度の導入に当たっては、社会保障と税の一体改革の原点に立ち、平成28年度末までに歳入及び歳出における取組みにより、与党の責任において、確実に安定的な恒久財源を確保することとします。
 また、軽減税率制度導入に当たり混乱が生じないよう、政府・与党が一体となって万全の準備を進めていきます。

2 軽減税率制度の対象品目
 軽減税率制度の対象品目は、飲食料品と定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞です。ここでいう飲食料品とは、酒税法に規定する酒類及び外食サービスとして提供されたものを除く、食品表示法に規定する食品が対象となります。
 例えば、おもちゃ付のおかしなど、軽減税率の対象である飲食料品が、他の商品と一体として販売される場合は、一定金額以下の少額のもので、飲食料品が主たる要素を占めているときに限り、その全体が軽減税率の対象となります。
 次に、ここでいう「外食」ですが、「場所の要件」と「態様の要件」の2つに着目し、食品衛生法上の飲食店営業その他のその場で飲食させるサービスの提供を行う事業を営む者が、テーブル、椅子その他のその場で飲食させるための設備を設置した場所で行う「食事の提供」その他これに類するものと定義します。
 また、上記「その他これに類するもの」には、相手方の注文に応じて指定された場所で調理等を行うケータリングや出張料理を含みます。
 外食の具体例を挙げると、牛丼屋やそば屋、フードコートなどでの店内飲食、コンビニのイートインコーナーでの飲食を前提に提供される飲食料品、ケータリング・出張料理があります。一方で、牛丼屋のテイクアウト、そば屋の出前、屋台での軽食、コンビニの弁当・惣菜などは外食に当たらず、軽減税率が適用されます。様々なケースについて混乱が起こらないように検討し、線引きを明確にしていくことが今後の課題となります。

3 適格請求書等保存方式の導入
 現行制度の請求書等保存方式における請求書の記載事項は、発行者の氏名又は名称、取引年月日、取引の内容、対価の額、請求書受領者の氏名又は名称の5つです。しかし、軽減税率が導入される平成29年4月以降は、区分記載請求書等保存方式とし、現行制度の記載事項に加えて、軽減税率の対象品目に印を付け、さらに税率ごとに合計した対価の額を記載していただくこととなります。ただし、追加されるこれらの記載事項は、請求書の交付を受けた事業者による追記も可能としています。
 そして、平成33年4月から適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス方式を導入します。これにより、先ほど区分記載請求書等保存方式で追加された記載事項に加えて、課税事業者の登録番号と税率ごとに区分して合計した取引金額に係る消費税額を記載することとなります。また、売り手に適格請求書の発行を義務付け、偽りの請求書を発行した場合に罰則を適用します。そして、経過措置として、免税事業者からの仕入れについて、平成33年4月からの3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除を可能とします。

4 消費税額の計算方法
 請求書等保存方式及び区分記載請求書等保存方式では、取引総額又は税率ごとの取引総額からの割戻し計算で消費税額を算出しますが、インボイス方式導入後は、税率ごとの取引総額からの割戻し計算と、適格請求書に記載のある消費税額の積上げ計算を選択できるようになります。ただし、端数処理による益税を防止するため、売上税額を積上げ計算する場合には、仕入税額も積上げ計算を選択しなければなりません。

5 「適格請求書等保存方式」の導入までの期間における売上・仕入税額の計算の特例
(1) 売上税額の計算の特例
 今後、現金商売の八百屋や地方の商店などを想定し、売上げを税率ごとに区分することが困難な事業者が、売上げの一定割合を軽減税率対象品目の売上げとして税額を計算することができるという特例を3つ設けます。
 1つ目は、売上げに占める軽減税率対象品目の割合は把握できていないが、仕入れについては管理できる卸売事業者と小売事業者については、仕入れに占める軽減税率対象品目の仕入れの割合を、そのまま売上げに占める軽減税率対象品目の売上げの割合とみなすことができるというものです。
 2つ目は、1つ目の特例に該当しない事業者の場合、つまり売上げと仕入れに占める軽減税率対象品目の割合がどちらも分からない場合は、通常の連続する10営業日の、売上げに占める軽減税率対象品目の売上げの割合を調べていただき、その割合をそのまま1年間の割合とみなすことができるというものです。
 3つ目は、上記2つの特例のどちらの計算方法も困難な事業者は、売上げの50%を軽減税率対象品目の売上げの割合とみなすことができます。ただし、主に軽減税率対象品目を販売する事業者の方が対象となります。売上げや仕入れの管理ができない場合は、こちらの特例を選択していただくこととなります。
 課税売上高が5000万円以下の中小事業者については、軽減税率制度の導入から4年間、3つの特例を選択することが可能です。加えて、中小事業者以外についても、軽減税率制度の導入から1年間に限り、同様の特例を選択できるようにします。
(2) 仕入税額の計算の特例
 一方で、仕入れを税率ごとに区分することが困難な事業者についても、仕入れの一定割合を、軽減税率対象品目の仕入れとして税額を計算することができる特例を2つ設けます。
 1つ目は、先ほどの特例と反対に、売上げを管理できる卸売事業者と小売事業者については、売上げに占める軽減税率対象品目の売上げの割合を、仕入れに占める軽減税率対象品目の仕入れの割合とみなすことができるというものです。
 2つ目は、1つ目の特例の計算が困難な事業者の場合、課税売上高が5000万円以下の中小事業者について、現在は課税期間の開始前に選択する簡易課税制度を、事後選択によりその適用を受けられることとします。また、中小事業者以外についても、同様の特例が設けられています。
 軽減税率制度の導入から1年間、2つの特例を選択することが可能です。


Ⅲ その他の改正事項

1 少子化対策・女性活躍の推進・教育再生等に向けた取組

(1) 三世代同居に対応した住宅リフォームに係る税額控除制度の導入
 世代間の助け合いによる子育てを支援する観点から、三世代同居に対応した住宅リフォームに関し、借入金を利用してリフォームを行った場合や自己資金でリフォームを行った場合の税額控除制度を導入します。
(2) 個人の寄附税制の包括的な見直し
 経済的な理由で修学が困難な学生に対して支援を行うことにより、意欲と能力のある者が希望する教育を受けられるようにする観点から、国立大学法人等の行う学生の修学支援事業のために充てられる個人寄附について税額控除制度を導入します。
 また、公益活動を促進する観点から、一定の公益性が担保され、個人寄附に係る税額控除が認められている法人について、税額控除の対象となるために必要な寄附者数の要件を事業規模に応じて緩和します。
(3) スイッチOTC薬控除(医療費控除の特例)の導入
 適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、検診、予防接種等を受けている個人を対象として、いわゆるスイッチOTC医薬品の購入費用についてセルフメディケーション推進のための所得控除制度を導入します。具体的には、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、スイッチOTC医薬品の購入費用を年間1万2000円を超えて支払った場合には、年間10万円を限度として、その購入費用のうち1万2000円を超える額を所得控除します。

2 地方創生を推進するための取組
(1) 企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の創設
 官民挙げて地方創生のために効果的な事業を推進できるようにするため、地域再生法の改正を前提とし、その枠組みに基づく認定事業に対する企業の寄附について、通常の損金算入による負担軽減に加え、法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除を創設します。通常の損金算入により約3割の負担軽減、そして税額控除により約3割の負担軽減、合計で約6割の負担軽減となります。
 ただし、どのような寄附でもいいというわけではなく、地方創生を推進する上で効果の高い事業をきちんと位置付けて、その事業に充てるための企業の寄附であれば、この制度の対象となります。
(2) 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充
 現在、免税店が大幅に増えており、特にこの1~2年で爆発的に増えています。平成27年10月の全国の免税店数は約2万9000店で、外国人旅行者の激増とともに免税店も激増しています。もともと外国人旅行者に対する消費税免税制度は、家電などの一般物品に限定して、購入下限額1万円超の場合に適用されていましたが、平成26年度税制改正により、化粧品や食料品などの消耗品が対象品目に加わり、これらについては、購入下限額5000円超の場合に適用されていました。その結果、大いに利用者も増えたわけですが、平成28年度税制改正では、一般物品・消耗品の購入下限額を5000円以上に統一することとします。
(3) 空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の導入
 相続により生じた空き家であって、旧耐震基準しか満たしていないものに関し、相続人が必要な耐震改修又は除却を行った上で、家屋又は土地を売却した場合の譲渡所得について特別控除を導入します。
(4) 地方法人課税の偏在是正
 消費税率10%への引上げに伴い、地方法人特別税を廃止するとともに、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、地方法人税を拡充し、法人事業税交付金を創設します。

3 グローバルなビジネスモデルに適合した国際課税ルールの再構築等
(1) BEPSプロジェクトについて
 国際的に活動している多国籍企業があるとします。そのような企業が、活動している各国の税制を熟知した上で、その関連会社間、親会社・子会社間の様々な取引を活用することによって、課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行うというケースがあります。そういったケースに対して、課税逃れを防ぎ公平な競争条件を整えるため、OECD租税委員会によって立ち上げられたのがBEPSプロジェクトです。
 G20からの要請も受け、平成25年7月には、15の行動計画から構成される「BEPS行動計画」を公表し、OECD非加盟のG20メンバーの中国、インド、ブラジル、ロシアなど8か国も議論に参加しました。そして、平成27年10月には「最終報告書」を公表し、G20財務大臣に報告、同年11月にG20サミットにも報告し、各国の今後の実施面での取組の重要性を確認しました。これを踏まえ、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえた必要な国内法整備を、今後、段階的に実施していくところです。
 平成28年度税制改正においては、多国籍企業のグローバルな活動・納税実態の把握のため、各国が協調して情報収集・共有する枠組みである多国籍企業情報の報告制度等を構築します。
(2) 日台民間租税取決め
 日台間の投資交流を促進するため、日台民間租税取決めを平成27年11月に取りまとめました。よって、この取決めに規定された、日台間で支払われた配当等の源泉地における課税税率の引下げ等について、日本で実施するための国内法を整備します。

4 納税環境整備
(1) 国税クレジットカード納付の創設
 国税の納付手段の多様化を図る観点から、インターネット上でのクレジットカードによる国税の納付を可能とする制度を創設します。
(2) 短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠蔽が行われた場合の加算税の加重措置の導入
 現行の加算税率は、無申告又は仮装・隠蔽が行われた回数にかかわらず一律であるため、意図的にそれを繰り返す者に対する牽制効果が限定的でした。そのため、悪質な行為を防止する観点から、過去5年以内に無申告加算税又は重加算税を賦課された者が、再び無申告又は仮装・隠蔽に基づく修正申告書の提出等を行った場合について、加算税を10%加重する措置を導入します。
 平成28年度税制改正について、法人税改革と消費税の軽減税率制度を中心にご説明させていただきました。ご清聴ありがとうございました。
 



(納税月報 2016年4月号より)


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